星をつけないブックレビュー
投資とは別に、読んだ書籍の中でおススメしたいものを紹介します。全て5つ星=おススメ。なので、評価はせずに内容や思ったことを綴ります。
今回はコロナ禍に読む「学問のすゝめ」
福沢諭吉といえば
福沢諭吉といえば何を連想しますか?
現在の一万円札、慶応義塾大学の二つが頭に浮かぶと思います。
慶応三年に発表した「西洋旅案内」という書物の中で、日本に初めて生命保険を紹介した人というのもありますが、この記事では「学問のすゝめ」を紹介するので、福沢諭吉は「学問のすゝめ」の著者であることを挙げます。
天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり
学問のすゝめ(福沢諭吉)
知らない日本人はいないはずでしょう。
この有名な文章で始まる第一編は、福沢諭吉が米国や欧州から戻ってきて四年経った、明治四年十二月に書かれ、翌年に出版されました。今から150年近く前のことです。
第二編は明治六年に入ってから再開し、以降明治九年まで全十七編を足掛け六年かけて書かれています。
有名な出だしから続く内容を思いっきり意訳すると、「人は平等ではないから、賢く裕福な側になるために学問をすべき」と数多の例を挙げ、表現を変えながら説いていきます。
書籍には当時書かれた版と現代語訳版があります。150年前とは言え、当時の日本語は現代人には読むのが難しく、現代語訳版をお勧めします。
明治版〇〇〇
小学生向けの小冊子
「慶応義塾大学を創設し、一万円札の肖像にもなった人の本だから難しそう」という印象を抱くかもしれません。
本書の成り立ちは、福沢諭吉の地元である中津(大分県中津市)に設立した中津市学校の開校に際し、地元の人向け、特に小学校で使う小冊子という位置づけでした。
ただ、広く読まれた方が良いということで、東京に移設した蘭学塾(慶應義塾)で印刷され、配布されていくことになります。
江戸時代から明治時代への移行期に渡米、さらに欧州も訪れた福沢諭吉は、「学問のすゝめ」の中で日本の独立と、独立のために学問が大切であるということを人々に広めようとします。
内容は相当攻めている
その語り口や例え話は痛烈で、攻めています。
今であれば「煽っている」という言い方が当てはまりそうです。そこで福沢諭吉のことを「明治の〇〇〇(思った人名を入れてください)」と呼ぶのも過言ではないでしょう。
例えば、学問とは実学のことを指し、難しい文字を知っていたり、詩を書くような学問は日常生活の役に立たないとバッサリと斬ります。独立についても当時あったアヘン戦争を例に挙げ、命を投げ出しても自国の威厳を守ることが自由独立であると説いています。
このほかにも、
- 国民がバカだと政治は暴力的なものにならざるを得ない
- 日本人に独立の気概がないと日本国は損をする
- 政府は国としての仕事のため税金を集める
- 「衣食住を満たすだけで自分は独立している」というのは、蟻以下
- 今は外国から学ぶことはあっても、将来日本は束縛されないよう独立すべき
- 他国は君主が民衆を子供や家畜のように養う様な扱いをしているが、本来は国と国民は大人同士の関係を持つべき
など、SNSが普及している現代であれば炎上の火種になりかねない書きっぷりです。
刺激的な書き方とはいえ、理路整然とした説明を読み進めていくと、彼の言わんとすることがすんなりと理解できます。
このようなことを説いていた福沢諭吉が、今回の新型コロナウイルスに対する日本政府の対応や日本国民の反応を見たら激怒しそうで、まさしくこの時期だからこそ、我々はこの本を読んで咀嚼すべきと言えます。
どこから読んでも良い本だけど
十七編は一編一編が独立しているので、興味のあるところから読んで構わないと言われています。
しかしながら、関連しているものや続き物の体裁になっているものもあるため、ランダムに拾い読みすると頭の中で話がつながらなくなる恐れがあります。
そこで本書の構成を記します。一括りになっている編同士をまとめて読むのが理解し易いと思います。
第一編~第三編
- 学問とは何か
- バカ者になってはいけない
- 国の独立には個人の独立が必要
- 有事への対応には愛国心を持った独立を
第四編~第五編
- 文明の発展には政府に頼ってばかりではいけない
- 国民と政府がそれぞれ責任を持ち国をつくる
- 国民の無気力の原因は、長い間政に関わってきていないから
- 気概、勇気は学問を実地で生かすことから
第六編~第七編
- 法律は悪事を取り締まるため国民が政府と約束したもの
- 国民は主人と客人の両方の役割があるので国民と政府は各役目を果たす
- 税金は国民の保護のために使われるの
- 暴政への対抗は力ではなく正理(訳は「道理」)を守り身を犠牲にする
第八編・第十一編
- 身体、知恵、欲、良心、意志の人間の性質を皆が上手に使えば権理を守れる
- 上下貴賤の名分(訳は「区別」)が他人に従う不合理を長い間培ってきた
- 専制は名分によって生まれてきた
- 名分ではなく職分で役割を明確化して国と国民は大人の関係を持つ
第九編~第十編
- 衣食住を満足させるだけでは蟻以下
- 後世に役立つプラスのことを残すのが人間社会
- 一時的に外国に頼ることがあっても永久に頼ってはいけない
- 今は学びの時であるが将来は日本の独立につながる
第十二編~第十六編
現代のビジネス書にも書かれていそうな、振る舞いや考え方が、学問の重要性と絡めて綴られています。十二編以降は十編まで繰り返し述べられたことが改めて纏まっているので、十編までを読んだら十二編以降に進むほうが分かり易いです。
第十七編
最終の十七編では、大切にすべき四つのこと、
- 人望
- 弁舌
- 外見
- 交際
を解説し、「人にして人を毛嫌いすることなかれ。」と結んでいます。
福沢諭吉が繰り返していること
学問のすゝめを通して福沢諭吉が何度も述べていることは、自分が自由に独立するためには学問が重要であること。その学問は実学と呼ばれる、実生活で活用できるものであること。各個人が自分で考えて独立できれば、国も独立できる、と解釈しました。
白馬の王子様が颯爽とやってきて、問題を解決してくれることを期待しがちな今の日本人に欠けている点です。
150年前の日本と世界情勢
150年前の日本周辺、アジア諸国は西洋の国々の植民地でした。
日本も黒船来航を経験し、福沢諭吉が蘭学を学び始めたころに開国しています。米国と「日米和親条約」「日米修好通商条約」を締結したものの、内容は日本にとって不利な不平等条約で、その後国内は混乱を通じて明治維新を迎えます。
福沢諭吉の抱いた危機感
当時、福沢諭吉が抱いた危機感は計り知れないでしょう。江戸時代は、お上が民衆を統治し、民衆もそれに従うだけでした。時代が移り変わっても長い間に刻まれた上の言いなりというDNAは簡単には変わりません。
学問という武器を持ち、個人のみならず国全体が他のアジア諸国の二の舞にならないように啓蒙をしようと出版された本書は今の日本人が読むべき本です。
2020年に福沢諭吉の忠告を聞く
アフター・コロナと言われる社会が必ず訪れます。
何もしなければ、これまでの延長線上で外部が構築した仕組みに、これまでの仕組みややり方を無理矢理に当てはめ、窮屈な世界を生きていくことになるかもしれません。
このタイミングを逆手にとって、新しいことを学び、学んだことを活用して変化する社会に適応出来れば、日本はもっといい国になると信じています。
本書は150年前からの未来(現代)への忠告と言えます。
将来に少しでも心配を減らすための勉強
このブログでは主に投資に関する話題を取り上げています。
将来の貯えをどうするか、準備は出来ているか。「自分はサラリーマンだし、退職金があるから大丈夫」と思っていても、それは本当でしょうか。企業の退職金制度は様々です。会社が退職金を積み立ててくれていると思ったら、実は前払い退職金制度だったらどうしますか。
また、現金を銀行の定期預金に預けているだけでは、貯めることは出来ても増やすことは出来ません。下手をすると物価上昇に伴い価値が目減りすることもあります。
そこで投資に無闇に手を出しても、投資ではなく投機をしていたり、自分の計画に向いていない商品を購入してしまい期待通りのリターンが得られないこともあります。
そのような事態を防ぐためには、とにかく勉強して自分の頭に武器を装着していく必要があります。
世の中は平等ではありません。であれば、あなたはどの位置に居たいですか。