日本人に、米国ETFで高配当な銘柄を問うと、「そりゃもちろんSPYDでしょ」という回答になるのが最近の傾向ではないかと思っています。
そこで、天邪鬼的にSPYDではない配当ETFを探してみようというシリーズ第二弾。
前回紹介したETFは下記記事からご参照ください。
今回詳細を見るのは「iシェアーズ 好配当株式 ETF (DVY)」
「何故DVYを選んだのか」は、たまたま目に入ったから。理由はなくとも、どんなものかを調べるのは重要です。
【注意】本銘柄は個人の意見として記載しているのみで、推奨されるものではありません。ETFの商品内容を確認した上で、ご自身の責任で投資判断を下してください。
どのようなETFなのか?
DVYの英語名称は「iShares Select Dividend ETF」で、日本語は「iシェアーズ 好配当株式 ETF」とほぼ直訳ですね。
本ETFはSBI証券、マネックス証券、楽天証券で取扱いがあります。
具体的にどのようなETFなのか、BlackRock社のDVY紹介のサイトからいくつか情報を拾います。
まずは、対象指標が存在するのか。DVYは「Dow Jones U.S. Select Dividend Index」という指数をベンチマークとしています。
「Dow Jones U.S. Select Dividend Index」がどのような指数なのかと、S&P Dow Jones Indicesのサイトでファクトシートを拾い、説明を見ると、
The Dow Jones U.S. Select Dividend Index aims to represent the U.S.’s leading stocks by dividend yield.
S&P Dow Jones Indices
と、とてもシンプルな説明です。雑に訳すと「このインデックスは配当利回りが米国有数の銘柄を代表してるよ」といった感じですね。まさしく、そのまま。
このような指数を対象指標としている本ETFについて信託報酬などの基礎情報を、SPYDと比較します。
DVY | SPYD | |
---|---|---|
信託報酬 | 0.39% | 0.07% |
総資産 | 120億ドル | 23億ドル |
配当利回り | 3.74% | 4.61% |
2020年度配当 | 3.58ドル | 1.52ドル |
株価(2020年11月27日時点) | 95.67ドル | 32.94ドル |
真っ先に目が行くのが信託報酬です。SPYDの0.07%に対して、0.39%と五倍以上の費用が掛かります。総資産額は、120億ドルとSPYDの六倍近い額を有しています。
また、配当は利回りは標準的な印象ですね。株価が近いHDVと比較すると利回りはDVYと似た水準でした。ただし、やはり気になる点は費用(信託報酬)でしょうか。
DVYのパフォーマンス
2020年11月27日のDVY終値は95.67ドル。
2020年は他のETFと同様に三月に大幅な下落があり、ゆっくりと戻ってきていますが、下落前の105ドル前後の水準には到達していません。
DVYの設定日は2003年11月3日まで遡ります。その設定来のパフォーマンスは6.62%でした。更に直近十年で見てみると9.45%と、最近の米国経済からみても納得の数値です。
BlackRock社のサイトで、設定日に一万ドルを投資しているといくらになるかというチャートを見ることができ、その画像を拝借します。

リーマンショックや新型コロナウイルスの影響が見て取れるチャートですが、十七年で34,675.87ドルに成長しています。
本シリーズ前記事で取り上げたVIGと比較をしてみます。直近十年の比較となりますが、一万ドルを投資すると、
- VIG:30,947.54ドル
- DVY:28,215.28ドル
とVIGの方が2,700ドル多い結果でした。
構成銘柄
DVYの構成銘柄は100あるため、すべての銘柄を書き出す代わりに、セクターと上位銘柄でSPYDと比較します。
セクター比較
はじめにセクター比較で、DVYの構成は以下の通りです。

最も高い割合は金融で、続いて公益事業です。これらふたつのセクターで半分近くを占めます。
次にSPYDを見ます。

二週間前から若干構成の入り繰りがあります。上位ふたつの金融と不動産は変わりませんが、エネルギーの割合が上がり、三番目につけています。なお、銘柄数は79のままです。
両ETFとも最も組み入れが高いのは金融という共通項があります。また、DVYは二番目に公益事業を持っていて、公共性の高いものが多いですね。配当を出す会社と考えると納得です。
上位十銘柄比較
上位十銘柄の比較として、構成割合が大きい順に上から十銘柄を記載しています。
DVY | SPYD | |
---|---|---|
1 | Prudential Financial Inc. | Invesco Ltd. |
2 | Altria Group Inc. | Xerox Holdings Corporation |
3 | International Paper Company | Regions Financial Corporation |
4 | Lyondellbasell Industries NV Class | Simon Property Group Inc. |
5 | Wells Fargo | Comerica Incorporated |
6 | Marathon Petroleum Corp. | ViacomCBS Inc. Class B |
7 | ViacomCBS Inc. Class B | International Paper Company |
8 | Fifth Third Bancorp | Ventas Inc. |
9 | Philip Morris International Inc, | Fifth Third Bancorp |
10 | PPL Corp. | Citizens Financial Group Inc. |
どちらとも最も割合の高いセクターが金融という事もあり、銀行や保険会社の名前が目立ちます。
DVYで興味深いのは、Altriaとフィリップ・モリスとタバコの会社が含まれていることです。実際にこれら二社は配当株としても有名です。
さらに、DVYの七位にあるViacomCBSが、今回のSPYDの六位にも入ってきていることです。
余談ですが、SPYDは各銘柄が均等割合で組み入れられているため、ViacomCBSが上位に食い込むという事は、この二週間で株価が上がったのではないかと思って調べてみたら、傘下の出版社であるSimon & Schusterを売却することで市場に好感され、買われたようです。
DVYに戻ると、日本人に馴染みのある会社は上位十社には入っていませんが、100社のリストを眺めると、メットライフ、エクソンモービル、HP、ファイザー、コカ・コーラといった聞き覚えのある有名な会社が出てきます。そして、これらは「そういえば、配当金出す会社だったな」といった銘柄でもあります。
コストが難点
DVYは、王道な銘柄から構成されるETFであるという事が分かりました。
また、配当利回りも3.74%と悪くありません。
しかし、信託報酬が0.38%というのが、低価格投資信託やETFに見慣れている身としては高く感じてしまいます。王道な配当銘柄に投資をするのであれば、直接Altriaやコカ・コーラを買ってしまった方が良いとも考えてしまいます。
ただし、当然の事ながら将来、個別銘柄に何が起きるか分からないため、ETFで、ある程度有名な配当株のセットに投資するといった選択肢としては、記憶の片隅に留めておいてよいかもしれません。