AIが銘柄選定する投資信託eMAXIS NeoとARKを比較してみる – フィンテック編

投資

eMAXIS Neoという投資信託の存在をインターネット上の広告で知りました。

興味が湧き三菱UFJ国際投信のサイトを見ると、革新、未来、AIの銘柄選定などクラっとして、フラフラっと購入してしまいそうな雰囲気で書かれています。

しかし、情報を見ていて感じたデジャブ感。

米国にもイノベーションに投資するETFがあります。イノベーションに投資するETFは人間が銘柄を選びます。

AIと人間が選ぶものはどれくらい差があるのか気になりました。

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eMAXIS Neoとはどのような投資信託?

eMAXIS Slimシリーズの投資信託を出している三菱UFJ国際投信には、eMAXIS Neoという商品があります。

謳い文句は「AIが銘柄を選ぶ、新時代のインデックスファンド」

それに続く説明を引用します。

AI(人工知能)が数百万ページ以上の企業の開示資料等を自動で読み込み、テーマに関連するコトバの有無を基本に銘柄を自動で選び出します。
AIだから、銘柄の取りこぼしが少なく、テーマの恩恵を十分に享受することが期待されます。

三菱UFJ国際投信(https://emaxis.jp/lp/neo/index.html)

確かに人間が数百万ページの開示資料を読むのは大変です。たとえ一社の決算情報を調べるのも労力はかかる。ましてや海外の会社の資料は英語になるので、考えただけでうんざりしそうで、それをAIが行ってくれるのは助かります。

テーマは9つ

各テーマでファンドが設定され、独立した投資信託商品となっています。つまりeMAXIS Neoには九つのラインアップがあります。

  • 自動運転
  • ウェアアブル
  • フィンテック
  • ナノテクノロジー
  • バーチャルリアリティ
  • ドローン
  • 宇宙開発
  • ロボット
  • 遺伝子工学

未来っぽい単語が並んでいますね。将来、我々の生活で身近になるものに投資する商品とうかがえます。

eMAXIS Neoはインデックスファンド?

謳い文句にある「インデックスファンド」という単語が気になりました。

説明を改めて読むと、AIが企業の開示資料情報を用いて各テーマに沿った銘柄を投資対象に組み入れるという方法の様です。

そして、目論見書を読んでみると、それぞれのファンドにベンチマークが設定されていることが分かります。

  • 自動運転(S&P Kensho Autonomous Vehicles Index)
  • ウェアアブル(S&P Kensho Wearables Index)
  • フィンテック(S&P Kensho Democratized Banking Index)
  • ナノテクノロジー(S&P Kensho Nanotechnology Index)
  • バーチャルリアリティ(S&P Kensho Virtual Reality Index)
  • ドローン(S&P Kensho Drones Index)
  • 宇宙開発(S&P Kensho Space Index)
  • ロボット(S&P Kensho Robotics Index)
  • 遺伝子工学(S&P Kensho Genetic Engineering Index)

括弧内の名称にある通り、S&P Dow Jones Indicesの指標である、Kenshoのテーマ毎インデックスに連動するように作られた商品となります。

このインデックスの銘柄選定をするのはKensho社のAIだそう。ちなみに同社は2018年にS&P Globalに買収されています。

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eMAXIS NeoとARK Investに似てる?

このeMAXIS Neoという商品を聞いた時の第一印象は「ARK INVESTのETFに似てる」ことです。

ARK Investとは?

ARK Investは、創業者のキャシー・ウッドが創業した投資運用会社で、アクティブETFという商品をはじめいくつかの商品を用意しています。

同社は破壊的なイノベーションにだけ投資することを方針としています。

かつてAppleがこれまでの携帯電話の常識を壊すような、全面画面でタッチスクリーンのiPhoneを世の中に登場させ、現在ではスマートフォンが普及しています。

ARK Investが、このような変化を起こす企業にのみ投資することを目指していることもあり、現在キャシー・ウッドは偏愛と呼べるくらいまでテスラに惚れ込んでいて、同社ETFでのテスラ株売買はウウォッチされたり、新興企業株を買ったというと、それに続く個人投資家もいたりします。

キャシー・ウッド

キャシー・ウッドが持っている方針は明確です。そんな彼女がリーダーシップを執る分析チームが選ぶ企業とAIが選ぶ企業に差はあるのか。

このような面に鑑み、eMAXIS NeoがARK ETFの代用になりうるのかを考えてみましょう。

既述のARK InvestのETFはテーマごとに設定されたアクティブETFで、五つあります。

  • ARK Innovation ETF(ARKK)
  • Autonomous Technology & Robotics ETF(ARKQ)
  • Next Generation Internet ETF(ARKW)
  • Genomic Revolution ETF(ARKG)
  • Fintech Innovation ETF(ARKF)

イノベーション、とそのままの名前のETFがありますが、自動化、ロボティクス、ゲノムなども魅力的です。

比較:eMAXIS Neo フィンテック vs. Fintech Innovation ETF(ARKF)

比較に際し、お互いに近そうなテーマの投資信託とETFである、eMAXIS Neo フィンテックと Fintech Innovation ETF(以下ARKF)を例として取り上げましょう。

基礎情報

両者を比較すると、設定日も近いうえに、信託報酬も似た水準にあります。一方で、総資産額はeMAXIS Neoの8億円に対し、ARKFは日本円で700億円近くと比較になりません。

eMAXIS Neo フィンテックFintech Innovation ETF(ARKF)
設定日2019年5月28日2019年2月4日
運用会社三菱UFJ国際投信ARK INVEST
信託報酬0.792%(税抜 0.72%)0.75%
総資産(2020年9月30日時点)8.19億円6.74億ドル

ひとつ付け加えると、eMAXIS Neo フィンテックには信託報酬に加えて、売買委託手数料、有価証券取引税、その他費用といった隠れコストもあります。2020年8月17日付の運用報告書を見ると、信託報酬および他の費用で1.125%になることは、覚えておいた方が良いです。

取扱い証券会社・銀行

eMAXIS Neo

2021年2月21日時点で、以下の16の証券会社、および銀行で購入することができます(五十音順、取扱いファンドの種類は異なる。)

  • 岩井コスモ証券
  • auカブコム証券
  • SBI証券
  • 岡三オンライン証券
  • 紀陽銀行
  • ジャパンネット銀行
  • 西日本シティTT証券
  • 松井証券
  • マネックス証券
  • 丸三証券(マルサントレードのみ)
  • 三菱UFJ銀行
  • 三菱UFJ国際投信
  • 三菱UFJ信託銀行
  • 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
  • 水戸証券
  • 楽天証券

ARK

一方でARKのETFを日本で購入する場合、サクソバンク証券ないしはIG証券との取引が必要となり、SBI証券、マネックス証券、楽天証券といった多くの人が口座を設けそうな証券会社では取扱いはありません。

ただ、サクソバンク証券、IG証券で取引をすると特定口座ではなく、一般口座での取引となります。確定申告を自分ですることを高いハードルと感じる方にはお勧めしにくいです。

組入銘柄

ARK Investでは、常時組入銘柄情報が更新されています。そのため、個人投資家は常にキャシー・ウッドの動向を注視しています。

対するeMAXIS Neoの情報更新頻度は下がります。すべての組入銘柄は商品サイトの運用報告書を見る必要がありますが、それは年一回の更新で、この記事の初稿時点では2020年8月17日の文書が最新です。

加えて、データの公開方法についても使い勝手が異なります。

ARKFの銘柄はCSVファイルで参照可能。ところが、eMAXIS Neoの銘柄情報はPDFのみ。そこからスプレッドシートへの抽出を試みたら文字化け。

手打ちで約50銘柄の対比表を作る気力はなく、上位十銘柄のみの比較です。補足ですが、上位十銘柄であればeMAXIS Neoの月報から2020年9月30日付の情報がありました。

eMAXIS Neoフィンテック上位十銘柄

下記がeMAXIS Neoフィンテックの上位十銘柄です。2020年9月30日時点での銘柄数は51です。

eMAXIS 銘柄比率ARKF有無
1Overstock.com Inc.8.6%無し
2Square Inc. – A4.9%有り(10.80%)
3Shopify Inc. – Class A3.8%有り(0.45%)
4Green Dot Corp. – Class A3.6%無し
5Paypal Holdings Inc.3.4%有り(3.53%)
6Mercadolibre Inc.3.4%有り(5.16%)
7Ally Financial Inc.3.3%無し
8Firelity National Info Service3.0%無し
9Visa Inc. – Class A2.8%無し
10Pagseguro Digital Ltd. – Class A2.8%無し
eMAXIS Neo:2020年9月30日時点、ARKF:2020年11月6日時点

ARKF上位十銘柄

ARKFの上位十銘柄も記載します。2020年11月6日時点で銘柄は46あります。

ARKF 銘柄比率eMAXIS有無
1Square Inc. – A10.80%有り(4.9%)
2Pinterest Inc. – Class A5.35%無し
3Mercadolibre Inc.5.16%有り(3.4%)
4Tencent Holdings Ltd.- UNS ADR3.96%無し
5Zillow Group Inc. – C3.92%無し
6Intercontinental Exchange3.90%無し
7Sea Ltd. – ADR3.71%有り(2.0%)
8Paypal Holdings Inc.3.53%有り(3.4%)
9Alibaba Group Holdings Ltd.- UNS ADR3.51%無し
10Lendingtree Inc.3.45%無し
eMAXIS Neo:2020年9月30日時点、ARKF:2020年11月6日時点

重複銘柄と独自銘柄

重複銘柄

両者の上位十銘柄での重複銘柄は以下の三つでした。

  • Square
  • Mercadolibre
  • Paypal

加えて、Shopify、Seaが50銘柄での重複として挙げられます。

これ以外にもササっと目視で確認すると、以下のような銘柄が両社で組み入れられています。

  • Apple
  • Schwab

「フィンテック」「Fintech」と言っても、Appleが含まれていたりします。eMAXIS Neoフィンテックでは、過去にはNVIDIAも保有していましたが、売却しています。一方でARKFでは現在も保有中。

eMAXIS Neoフィンテック独自銘柄

eMAXIS Neoフィンテックの銘柄には、保有数がごくわずかであるものの、Allstateといった保険やVISA、Mastercardも含まれています。

特にVISAは400株から800株へ、Mastercardは100株から300株へ保有数を増やしています。

そして、銘柄は一年でも変化があり、AEGON、NCRのような老舗企業銘柄の保有数が減っているのに対して、新進のフィンテックらしい銘柄の保有数が増えているものもあります。

それでも、ARKFのようにフィンテックを下支えしそうなテクノロジー銘柄を積極的に組み込んでいる様子ではなさそうです。

ARKF独自銘柄

ARKFはPinterest、Docusign、ZscalerなどARK Investの方針通り、未来の金融を変えていくのでは、とキャシー・ウッドの目論見が垣間見える銘柄が散見されます。

例えば、PinterestはSNSにとどまらず、未来のEコマースを変えるのではないかという事で注目が高まっています。そして、第3四半期の決算後には一気に株価が上昇しています。

Yahoo! Finance(PINS、2020年1月からの株価推移)

Docusign、Zscalerといった会社はセキュリティー面で未来の金融を下支えするといったところでしょうか。

運用状況

直近の基準価額で運用状況を確認します。

eMAXIS Neo フィンテックFintech Innovation ETF(ARKF)
設定日2019年5月28日2019年2月4日
設定日基準価格10,000円20.25ドル
基準価額17,073円61.81ドル
参考:2021年2月19日時点、ARKFの取引価格は62.64ドル

設定来で比較すると、ARKFのパフォーマンスはeMAXIS Neoを大きく上回っています。

eMAXIS NeoはARKFに似ているが、代用として考えるには大人しい

以上、基礎情報、組入銘柄などを見てきました。

Kensho社のAIが選択する銘柄で構成された指数に連動するeMAXIS Neoはフィンテックと言っても、キャシー・ウッドが選定する銘柄ほど大きな冒険はせず、現時点では設定来の三割増しと固い成績を残しています。

キャシー・ウッドは金融システムを支えるであろうテクノロジー株も積極的に取り入れており、基準価額も大きく成長させています。個人投資家が彼女の動きに注目する理由も納得。

日本から手軽に特定テーマに投資をしたいと考えた時に、ARKFは現状こだわりのある人向けなのではないかと思います。では、eMAXIS Neoはどうか、と言うと税込みで1%を超える信託報酬と費用が気になります。

業種は問わずに全世界を対象としたeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の信託報酬は0.1144%で隠れコスト込みでも0.209%(2020年4月27日時点)。アメリカのテクノロジー株を中心としたNASDAQ100を対象とした大和アセットマネジメントのiFreeNEXT NASDAQ100インデックスでも税込みで0.495%で、隠れコスト込みで0.579%(2020年10月22日時点)となります。

フィンテック関連企業に幅広くという強い意向がなく、どちらかというとSquareやPaypalといった特定企業に期待をしているんだという場合は、それら個別株を買う方が良いのではないかと考えています。

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フィンテックに続いて、遺伝子工学および自動運転でeMAXIS NeoとARKのETFを比較してみました。ぜひご覧ください。