はじめての投資 9-2. 投資信託「THE 5G:次世代通信関連 世界株式戦略ファンド」を深掘り

はじめての投資

「投資をしよう!」と思ったあなたに、細かい説明を極力省略して簡潔に説明をする「はじめての投資」です。

前回の続きです。


前回では、二種類の投資信託ランキングを比較しました。買われる投資信託商品と投資に関する情報を提供している人が選ぶ投資信託商品では差があることが分かりました。

大きな違いの一つに信託報酬があります。

ランキングでは売れている投資信託商品の信託報酬は高く設定されています。その高い分だけ見合うのか、特徴を探りたいと思います。

今回は2019年に買われた投資ランキングの中で信託報酬が1.848%と最も高い、「THE 5G[次世代通信関連 世界株式戦略ファンド]」を取り上げます。

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with コロナ、テレワーク、5G、AI、IoT、全部入り

THE 5G[次世代通信関連 世界株式戦略ファンド](以下、「THE 5G」と呼びます)は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが委託会社として販売している商品です。

概要はマネックス証券のサイトにある「世界で大注目の5G!「THE 5G」注目ポイントをご紹介」という記事が目を惹く画像や動画を使ってまとめているので、そのページをご覧ください。

私事で恐縮ですが、アナログの大容量方式、TACS方式から移動体通信業界に関わっていた身としては、四半世紀強で、デジタルの第五世代が商用化されるというのは感慨深いものがあります。

「自宅にいなくても通話ができる」から「文字を送れる」「インターネットにつながる」と進化し、インターネットにつながるものが電話機だけではなく、AIを使った自動車の自動運転を代表するモノも含まれるというだけで、THE 5Gに未来を感じざるを得ません。

さらに、オフィス外で業務をするテレワークも、数年前に一部企業でテレワーク廃止に動いたりしていましたが、新型コロナウイルスにより、テレワークは進んでいくと考えられます。

つまり、THE 5Gでお金を運用するということは、将来有望な対象へ投資していることになりそうです。

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インデックス投資信託で良いのではないかと思った

ここまで書いておきながら、個人的に思ったのが、

「5Gという夢があるのならば、アメリカのテクノロジー系企業がたくさんあるNASDAQ100に投資するのが良いのではないか」

です。

5Gという通信サービスを提供するのは通信事業会社ですが、基地局を作るメーカー、通信機器を作るメーカー、通信機器を組みこむ機械を作るメーカー、ソフトウエアを作る会社、その他サービスを提供する会社もあり、これら企業は多かれ少なかれ恩恵を得ることになります。

あまり深いことを考えずに、Apple、Microsoft、NVIDIA、シスコなどをはじめとした会社が含まれているNASDAQ100に投資するETFのQQQ、ないしは投資信託の iFree NEXT NASDQA100 で用を為すという印象を受けました。

iFree NEXT NASDAQ100 は、つみたてNISAでの投資が不可、他のインデックス投信と比較すると高めの信託報酬(0.495%)が一見短所として挙げられますが、それでも良い投信だと思っています。

目論見書を読む

NASDAQ推しなことを書いてきましたが、THE 5Gは5Gに特化しているという特徴があるので、それを目論見書から確認してみます。

投資形態:ファンズ・オブ・ファンズ

投資信託の投資形態には、ファミリーファンド方式とファンズ・オブ・ファンズ方式というのがあります。詳細の説明は割愛しますが、THE 5Gは後者の方式です。

ファンズ・オブ・ファンズ方式は、ざっくりというと、投資家が出資したお金を、投資信託が新たに別の投資信託に出資して運用を行います。

全てが当てはまるわけではないですが、ファンズ・オブ・ファンズ方式は信託報酬が高くなる傾向があります。

主要投資対象ファンド

上述のファンズ・オブ・ファンズ方式と関連があるのが、主要投資対象ファンドというものです。これはTHE 5Gが投資する投資信託です。

主要投資対象ファンドを運用しているのが、ニューバーガー・バーマン・インベストメント・アドバイザーズという会社です。

この会社が世界各国の上場企業を分析して、投資対象の企業やその割合といったポートフォリオを決めていきます。投資対象は、ケイマン籍円建外国投資信託証券「Next Generation Connectivity Fund JPY Unhedged Class」です。

この「Next Generation Connectivity Fund」の詳細情報を探そうと、ニューバーガー・バーマン・グループのサイトも見たのですが、情報を得ることができませんでした。

信託期間

インデックス投信では気にすることがないのが信託期間です。THE 5Gの目論見書には「原則として、2017年12月15日(設定日)から2028年1月7日までとします。」と書かれていますので、いまから投資を始めても投資期間は十年残っていません。

2030年ごろには第六世代の6Gが視野に入っているので、5Gというテーマの鮮度は失われていると思いますが、期限があると運用しているファンドの解約方法に工夫を加える余地が少なくなります。

運用報告書を読む

今度は運用報告書を読みます。最新の運用報告書は2020年1月7日付です。

目論見書では、主要投資対象ファンドが投資している株式の情報が見つかりませんんでした。こちらにはポートフォリオの情報はあるでしょうか。

基準価格・騰落率

2020年1月7日の決算ではTHE 5Gの基準価格は12,019円でした。

2019年の基準価格が8,546円だったので、10,000円でスタートした設定時の2017年12月5日から一時減少したものの、直近は基準価格が上がっています。

なお、2019年から2020年の間には分配金の支払いはされていません。

騰落率は40.6%のプラスと書かれていて浮かれそうになりますが、前回の決算からの変化を示すため、冷静になる必要があります。

純資産総額

純資産総額は、2019年に買われた投資信託の三位にランキングされるだけあり、2019年1月決算から2020年1月決算までの一年間で、1,945億円から4,697億円へ増加しています。

2020年6月12日時点で5,670億円となっており、大きな純資産総額を有しています。

投資対象企業を調べる

運用報告書で上位十銘柄を見つけました。参考までに報告書によると、Next Generation Connectivity Fundには44の組み入れ銘柄があります。

銘柄THE 5G割合QQQ割合備考
Keysight Technologies Inc.米国3.7%NYSE上場
Adobe Inc.米国3.6%2.01%
T-Mobile US米国3.6%1.29%
PTC米国3.6%NASDAQ上場
Xilinx, Inc.米国3.5%0.23%
Analog Devices, Inc.米国3.4%0.45%
Cisco Systems, Inc.米国3.4%1.95%
村田製作所日本3.4%東証上場
Alibaba Group Holding Ltd.中国3.2%NYSE上場(ADR)
SK hynix Inc.韓国3.2%
THE 5G 2020年1月7日の運用報告書から再構成。QQQの組入率は2020年6月12日時点。

参考までに QQQの組入銘柄は、上位十銘柄では半数が重複していることが分かりました。

残りの銘柄を探します。

三井住友トラスト・アセットマネジメントのTHE 5Gのサイトで、2019年12月30日時点のものを2020年6月4日に掲載しているのを発見しました。しかし、残念ながら、銘柄リストが画像データで一覧作成には難儀していますので、追って掲載の仕方を考えます。

その画像データを見ると、Amazon.com、マイクロソフト、サムスン電子、ノキアなど聞き覚えのある会社があります。ただ、自動運転の研究をしていそうなAlphabetやテスラは入っていません。日本メーカーもTDK辺りがあっても良い気がしますが、ありませんでした。

加えて、銘柄の入れ替えは頻繁に行われています。例えばNTTドコモやディスカバリーチャンネルのDiscoveryは2018年12月28日付資料には記載されていましたが、2019年12月30日付資料からは外れています。

ポートフォリオの確認は次の記事にて

目論見書、運用報告書の話になってくると、もはや「はじめての投資」ではなくなってきましたが、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。

気付いたと思われますが、信託報酬が高い投資信託では、テーマに沿った銘柄選択をして、適宜銘柄を選んで入替を行っています。銘柄選択、入替のための労力が費用として発生しますので、インデックス投資信託よりも高めの設定になります。

次の記事では、THE 5Gの投資対象の銘柄とQQQの銘柄を比較しながら、投資信託の特徴をみていきます。