「投資をしよう!」と思ったあなたに、細かい説明を極力省略して簡潔に説明をする「はじめての投資」です。
前回の続きです。
前回では、二種類の投資信託ランキングを比較しました。買われる投資信託商品と投資に関する情報を提供している人が選ぶ投資信託商品では差があることが分かりました。
大きな違いの一つに信託報酬があります。
ランキングでは売れている投資信託商品の信託報酬は高く設定されています。その高い分だけ見合うのか、特徴を探りたいと思います。
今回は2019年に買われた投資ランキングの中で信託報酬が1.848%(税込)と最も高い、「THE 5G[次世代通信関連 世界株式戦略ファンド]」を取り上げます。
なお、本投資信託はNISA成長投資枠を使うことが出来ます。
テレワーク、5G、AI、IoT、全部入り
THE 5G[次世代通信関連 世界株式戦略ファンド](以下、「THE 5G」と呼びます)は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが委託会社として販売している商品です。
概要はマネックス証券のサイトにある「世界で大注目の5G!「THE 5G」注目ポイントをご紹介」という記事が目を惹く画像や動画を使ってまとめているので、そのページをご覧ください。
私事ですが、アナログの大容量方式、TACS方式といった時代から移動体通信業界に関わっていた身としては、四半世紀強で、デジタルの第五世代が商用化されるというのは感慨深いものがあります。
「自宅にいなくても通話ができる」から「文字を送れる」「インターネットにつながる」と進化し、インターネットにつながるものが電話機だけではなく、AIを使った自動車の自動運転を代表するモノも含まれるというだけで、THE 5Gに未来を感じざるを得ません。
さらに、オフィス外で業務をするテレワークも、2010年代後半には一部企業でテレワーク廃止に動いたりしていましたが、新型コロナウイルスにより、テレワークは進んでいくと考えられました。結果的にはコロナ騒ぎが無くなり米国のテクノロジー企業はオフィス出社となっていますが、リモートで可能な業務は残っています。
そして、AI市場は活況。
つまり、THE 5Gでお金を運用するということは、将来有望な領域を生業としている企業への投資となりそうです。
インデックス投資信託で良いのではないかと思った
ここまで書いておきながら、個人的には
「5Gという夢があるのならば、アメリカのテクノロジー系企業がたくさんあるNASDAQ100に投資するのが良いのではないか」
と考えています。

5Gという通信サービスを提供するのは通信事業会社ですが、基地局を作るメーカー、通信機器を作るメーカー、通信機器を組みこむ機械を作るメーカー、ソフトウエアを作る会社、その他サービスを提供する会社もあり、これら企業は多かれ少なかれ恩恵を得ることになります。
あまり深いことを考えずに、Apple、Microsoft、NVIDIAなどをはじめとした会社が含まれているNASDAQ100に投資するETFのQQQ、ないしはNASDAQ100を対象とした投資信託で用を為すという印象を受けました。
NASDAQ100の投資信託の老舗は、iFreeNEXT NASDAQ100インデックスで、信託報酬は0.495%(税込)とやや高めです。iFreeNEXT NASDAQ100インデックスの他にも類似の投資信託が登場し、それらの信託報酬は低くなっています。
また、iFreeNEXT NASDAQ100インデックスは、NISAつみたて投資枠、成長投資枠のいずれでも投資可能ですが、他の投資信託は成長投資枠のみであったり、NISA対象外であることもあるので、投資目的に合わせて選択すればよいとおもいます。
目論見書を読む
NASDAQ推しなことを書いてきましたが、THE 5Gは5Gに特化しているという特徴があるので、それを目論見書から確認してみます。
投資形態:ファンズ・オブ・ファンズ
投資信託の投資形態には、ファミリーファンド方式とファンズ・オブ・ファンズ方式というのがあります。詳細の説明は割愛しますが、THE 5Gは後者の方式です。
ファンズ・オブ・ファンズ方式は、ざっくりというと、投資家が出資したお金を、投資信託が新たに別の投資信託に出資して運用を行います。
全てが当てはまるわけではないですが、ファンズ・オブ・ファンズ方式は信託報酬が高くなる傾向があります。
主要投資対象ファンド
上述のファンズ・オブ・ファンズ方式と関連があるのが、主要投資対象ファンドというものです。これはTHE 5Gが投資する投資信託です。
主要投資対象ファンドを運用しているのが、ニューバーガー・バーマン・インベストメント・アドバイザーズという会社です。
この会社が世界各国の上場企業を分析して、投資対象の企業やその割合といったポートフォリオを決めていきます。投資対象は、ケイマン籍円建外国投資信託証券「Next Generation Connectivity Fund JPY Unhedged Class」です。
この「Next Generation Connectivity Fund」の詳細情報を探してみると、ティッカーがNBXGの「Neuberger Berman Next Generation Connectivity Fund Inc.」という名称のクローズドエンド型の投資信託にたどり着きます。ただ、銘柄などを調べても同一なのか、類似のものなのか判断が付きません。
運用報告書を読む
どんな会社に投資をしているかを調べるべく、目論見書を確認しても情報が見つかりません。運用報告書を確認してみます。
2020年1月7日付
基準価格・騰落率
2020年1月7日の決算ではTHE 5Gの基準価格は12,019円でした。2019年の基準価格が8,546円だったので、10,000円でスタートした設定時の2017年12月5日から一時減少したものの、直近は基準価格が上がっています。
なお、2019年から2020年の間には分配金の支払いはされていません。
騰落率は40.6%のプラスと書かれていて浮かれそうになりますが、前回の決算からの変化を示すため、冷静になる必要があります。
純資産総額
純資産総額は、2019年に買われた投資信託の三位にランキングされるだけあり、2019年1月決算から2020年1月決算までの一年間で、1,945億円から4,697億円へ増加しています。
2020年6月12日時点で5,670億円となっており、大きな純資産総額を有しています。
2025年1月7日付
基準価格・騰落率・純資産
2025年1月7日の決算、29,277円となっています。五年前の2020年と比較すると、140%の成長をしています。
一方で分配金は2020年から一度も支払いはありません。
純資産は6,547億円で、2020年からの増加率は15%程度となっています。

投資対象企業を調べる
運用報告書に銘柄が記載されていました。2024年5月31日時点の銘柄数は54銘柄となっています。2020年1月7日の運用報告書で確認した上位十銘柄と、2024年5月時点のもので比較をします。
銘柄 | 国 | 構成比 | 銘柄(2024年5月31日) | 国 | 構成比 |
---|---|---|---|---|---|
Altice USA, Inc. Class A | 米国 | 3.55% | NVIDIA Corp. | 米国 | 5.71% |
Keysight Technologies Inc. | 米国 | 3.53% | Amazon.com, Inc. | 米国 | 4.65% |
Xilinx, Inc. | 米国 | 3.51% | Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd. | 台湾 | 4.65% |
Zebra Technologies Corporation Class A | 米国 | 3.49% | Meta Platforms Inc Class A | 米国 | 3.91% |
Qorvo, Inc. | 米国 | 3.48% | Renesas Electronics Corporation | 日本 | 3.70% |
Analog Devices, Inc. | 米国 | 3.45% | ARM Holdings PLC ADR | 英国 | 3.46% |
Motorola Solutions, Inc.. | 米国 | 3.33% | MediaTek Inc. | 台湾 | 3.33% |
Cisco Systems, Inc. | 米国 | 3.17% | Vertiv Holdings Co. Class A | 米国 | 3.26% |
Palo Alto Networks, Inc. | 米国 | 3.14% | Microsoft Corp. | 米国 | 3.16% |
T-Mobile US, Inc. | 米国 | 3.09% | Broadcom Inc. | 米国 | 3.03% |
銘柄には国名があるので、国別の構成比を調べます。米国が三分の2を占めており最も大きな構成比で、台湾、日本と続きます。中国の構成比が最も小さく、Xiaomi一社のみということもあり、この種の領域では入り込めないのでしょうか。

尚、日本の構成銘柄は以下の四銘柄です。2024年5月31日時点のデータで、括弧はTHE 5Gにおける構成比です。
- ルネサスエレクトロニクス(3.7%)
- アドバンテスト(2.2%)
- ディスコ(1.7%)
- 東京エレクトロン(0.3%)
ポートフォリオの確認は次の記事にて
目論見書、運用報告書の話になってくると、もはや「はじめての投資」ではなくなってきましたが、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。
気付いたと思われますが、信託報酬が高い投資信託では、テーマに沿った銘柄選択をして、適宜銘柄を選んで入替を行っています。銘柄選択、入替のための労力が費用として発生しますので、インデックス投資信託よりも高めの設定になります。
次の記事では、THE 5Gの投資対象の銘柄とQQQの銘柄を比較しながら、投資信託の特徴をみていきます。