日本人に、米国ETFで高配当な銘柄を問うと、「そりゃもちろんSPYDでしょ」という回答になるのが最近の傾向ではないかと思っています。
そこで、天邪鬼的にSPYDではない配当ETFを探してみようというシリーズ第二弾。
前回紹介したETFは下記記事からご参照ください。
今回詳細を見るのは「iシェアーズ 好配当株式 ETF (DVY)」
「何故DVYを選んだのか」と問われれば、「たまたま目に入ったから」と回答します。理由はなくとも、どんなものかを調べるのは重要です。
そして、調べてみたら思ったよりも個性があるのではないかと思えてきました。
【注意】本銘柄は個人の意見として記載しているのみで、推奨されるものではありません。ETFの商品内容を確認した上で、ご自身の責任で投資判断を下してください。
VOICEROID動画
本ETFについて、YouTubeにVOICEROID解説動画を公開していますので、ぜひご覧ください。
基準となる指数
DVYの英語名称は「iShares Select Dividend ETF」で、日本語は「iシェアーズ 好配当株式 ETF」とほぼ直訳ですね。
本ETFはSBI証券、マネックス証券、楽天証券で取扱いがあります。
具体的にどのようなETFなのか、BlackRock社のDVY紹介のサイトからいくつか情報を拾います。
指数はDow Jones U.S. Select Dividend Index
まずは、対象指標が存在するのか。DVYは「Dow Jones U.S. Select Dividend Index」という指数をベンチマークとしています。
「Dow Jones U.S. Select Dividend Index」がどのような指数なのかと、S&P Dow Jones Indicesのサイトでファクトシートを拾い、説明を見ると、
The Dow Jones U.S. Select Dividend Index aims to represent the U.S.’s leading stocks by dividend yield.
S&P Dow Jones Indices
と、とてもシンプルな説明です。雑に訳すと「このインデックスは配当利回りが米国有数の銘柄を代表してるよ」といった感じですね。まさしく、そのままです。
もう少し何か情報がないか、探っていくと方法論について説明している文書に、以下の記載があります。
Dow Jones U.S. Select Dividend Index. Measures the performance of 100 high dividend-paying companies, excluding REITs, meeting specific criteria for dividends, earnings, size and liquidity.
S&P Dow Jones Indices
本指数は、REITを除いた、特定の条件に当てはまる100の高配当銘柄のパフォーマンスを測定するものとなっています。
Dow Jones U.S. Select Dividend Indexに含まれるには
この指数の銘柄となるには、以下の条件を満たす必要があります。S&P Dow Jones Indicesのサイトにある説明を見ると数式もあって読む気が失せてしまいそうなところ、踏ん張ってみます。資料は2021年5月時点です。
- 一株当たりの配当金が過去五年の配当金平均を上回る
- 過去五年間のDividend coverage ratio平均が167%以上
- 過去五年間に配当金支払いがある
- 過去12ヶ月にEPSがプラスである
- 浮動株時価総額が30億ドルを上回る(現在組み入れられているものは20億ドル)
- 一日当たり20万株の出来高がある(現在組み入れられているものは10億ドル)
一言で言うと、増配を続けていて、赤字がなく、株式の取引が活発なものが組み入れられる、といったところでしょうか。
実は、上記は足切り要件で、これらを潜り抜けた銘柄の配当利回りで200位まで順位付けがなされます。更に上位100社が指数に組み入れられるという流れです。
Dow Jones U.S. Select Dividend Indexでの組入比率
選定された銘柄は、適切な比率で組入れられます。その比率、つまり構成割合は配当利回りで決定されますが、各銘柄の構成割合は10%を超えないか、その銘柄の浮動株時価総額を前組入銘柄の浮動株時価総額で割った結果を5倍したものを超えないように定められています。
同時に、各セクターの構成も30%も超えないことも条件にあります。
銘柄入替
銘柄入替は年一回で毎年、三月の第三金曜日の翌営業日に実施されます。
四半期ごとにも確認はしており、過去12ヶ月で減配などあった銘柄が除外となることが、S&Pの委員会で決定されることがあります。
加えて組入銘柄が上場廃止や倒産となった場合は、即座に除外されます。
どの様なETFなのか?
DVY基礎情報
このような指数を対象指標としているDVYの基礎情報を、SPYDと比較します。
DVY | 参考:SPYD | |
---|---|---|
経費率 | 0.39% | 0.07% |
総資産 | 180億ドル | 47億ドル |
配当利回り | 3.74% | 4.61% |
2020年度配当 | 3.58ドル | 1.52ドル |
株価 | 117.35ドル | 39.64ドル |
真っ先に目が行くのが経費率です。これは投資信託の信託報酬と同様の費用であり、SPYDの0.07%に対し、0.39%と五倍以上の費用が掛かります。総資産額は、180億ドルとSPYDよりも大きな額を示しています。
目論見書に書かれていること
DVYのサイトから目論見書を確認することができます。
目論見書には基本的な情報が書かれていますが、いくつか興味深い点を見つけました。
- DVYはDow Jones U.S. Select Dividend Indexを基準として投資を行う。
- 保有銘柄の選定は層化抽出法を用いる。そのため、指数が持っているすべての銘柄が含まれないことがある。
指数の銘柄にできる限りついていくという訳でもなさそうです。
DVYのパフォーマンス
この記事の初稿を書いた2020年11月27日時点のDVY終値は95.67ドル。そして、今回記事を更新しているタイミング(2021年8月6日時点)では、117.36ドルです。
2020年は他のETFと同様に三月に大幅な下落があり、ゆっくりと戻ってきていますが、2021年に入って下落前の105ドル前後の水準を超えています。
DVYの設定日は2003年11月3日まで遡ります。その設定来のパフォーマンスは8.56%でした。更に直近十年で見てみると12.29%と、最近の米国株の状況を踏まえると納得の数値です。
BlackRock社のサイトで、設定日に一万ドルを投資しているといくらになるかというチャートを見ることができ、その画像を拝借します。
リーマンショックや新型コロナウイルスの影響が見て取れるチャートでありながらも、なんと、43,618.20ドルに成長。
構成銘柄
記述の通り、DVYの構成銘柄は指数に完全連動している訳では無い模様です。
その比較をしたいのですが、構成銘柄は100あるにもかかわらず、S&P Dow Jones Indicesが全ての銘柄を公開していないのか、見つけられませんでした。
そのため、すべての銘柄を書き出す代わりに、上位銘柄とセクターでETFと指数の構成を比較します。
上位十銘柄比較
データの日付に一週間の差があるものの、上位十銘柄の順位で入り繰りがあります。
DVY | 指数 (Dow Jones U.S. Select Dividend Index) | |
---|---|---|
1 | ONEOK INC. | ONEOK INC. |
2 | ALTRIA GROUP INC. | ALTRIA GROUP INC. |
3 | AT&T INC. | AT&T INC. |
4 | PPL CORP. | PHILIP MORRIS INTERNATIONAL INC. |
5 | PHILIP MORRIS INTERNATIONAL INC. | PPL CORP. |
6 | INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CO. | INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CO. |
7 | PFIZER INC. | EXXON MOBIL CORP. |
8 | EXXON MOBIL CORP. | PRUDENTIAL FINANCIAL INC. |
9 | PRUDENTIAL FINANCIAL INC. | PFIZER INC. |
10 | FIRSTENERGY CORP. | FIRSTENERGY CORP. |
セクター比較
セクター比較をすると、ETFと指数で更に差があることが分かります。まずは、DVYのセクター構成です。
最も高い割合は公益事業、金融と続きます。これらふたつのセクターで半分近くを占めます。その次は生活必需品となっており、一割には届きません。
次に指数のDow Jones U.S. Select Dividend Indexを見ます。
セクター名称が異なるため、読み替えをしながら見ていきます。
上位四つのセクターまでは同じ順位を示していますが、構成割合は異なります。例えば、Consumer Staples(生活必需品)とConsumer Goods(消費財)は2ポイント近くの差があります。
五位以下のセクターは順位の入り繰りや構成比の差が発生しており、指数との乖離があるETFと言えそうです。
乖離
指数に連動するETFや投資信託の目論見書には、投資に際して様々なリスクを並べている中に「Tracking Error Risk」というものを記載しています。
簡単に言うと、指数に沿うように投資をしているものの、株式の売買などで手数料の支払いがあったりすることで、完全に連動をすることはなく、ETFと指数のパフィーマンスとの差、つまり乖離があることは認めざるを得ません。
ちなみに、SPYDとパフォーマンスについて比較をしてみます。
DVY | Dow Jones U.S. Select Dividend Index | SYPD | S&P500 High Dividend Index | |
---|---|---|---|---|
過去一年 | 44.59% | 45.29% | 48.87% | 48.95% |
過去三年 | 9.01% | 9.44% | 6.84% | 6.85% |
過去五年 | 9.66% | 10.10% | 7.93% | 8.00% |
過去十年 | 12.29% | 12.72% | — | — |
DVYは指数に対して0.43~0.7ポイント下回るパフォーマンスであるのに対し、SPYDは、0.01~0.08ポイントを下回るパフォーマンスでした。
SPYDは指数と構成銘柄においても差が小さいので、この辺りについても、DVYのクセとして見ておく必要があるでしょう、
DVYは若干個性のあるETFかも
DVYについて、指数である Dow Jones U.S. Select Dividend Indexと対比しながらみてきました。
配当利回りが3.74%と悪くないETFですが、経費率が0.38%というのが、低価格投資信託やETFに見慣れている身としては高く感じてしまいます。王道な配当銘柄に投資をするのであれば、直接Altriaやコカ・コーラを買ってしまった方が良いとも考えてしまうかもしれません。
ただ、コスパ至上主義で費用がかかることをすべて否定することは避けた方が良いとも考えます。費用がかかるにはメンテナンスなど必要な経費を要するのかもしれません。DVYはアクティブファンドではないとはいえ、構成銘柄に癖のある、個性的なETFとも言えそうです。
有名な大企業への投資をこのETFで行うことができる一方で、ETFの性質により、過去のパフォーマンスに乖離が発生してたことも理解した上で、投資の検討をする必要があるでしょう。