S&P500を振り返る
株価の下落が続いています。主な原因は新型コロナウイルスと原油価格と言われています。
まず、新型コロナウイルスは、アビガンの件など希望の光が見えつつも、収束は見えていません。経済への影響も見え始め、例えば米国では家賃などの支払い猶予を行っていることによる波及が広がりつつあります。
ブレント原油、WTI原油の直近価格は上昇カーブを描いているものの、三月最終週は最低水準でした。さらに、米国のシェールガス企業であるホワイティング・ペトロリアムが4月1日に米連邦破産法第11条(Chapter 11)の適用を申請し破綻しています。
このような環境の中、S&P500はどうでしょうか。

3月23日を境に見せている上向きの線は「もしかしたら」と一瞬期待してしまいそうです。しかし、過去の〇〇ショックと比較すると、まだ入り口にいるように思えます。
リスク許容度よりも気持ちが耐え切れず売却
つみたてNISAは2018年1月から制度が開始されました。制度開始当初からS&P500に連動する投資信託を積み立てている人は、2018年後半に下落を体験しているはずで、当時の下落は-18%でした。(下図の最高値と最低値の差)
今回は一か月経たないうちに-33%下落していますので、2019年に入ってからつみたてNISAを開始した人だけではなく、一昨年から積み立て始めた人も動揺は否めないと思います。

2018年から開始の制度を利用して資産形成をしようとしているということは、現在積み立てている資産は近々使う予定ではないものでしょう。そのため、リスク許容度の観点から投資信託を売却する理由は見当たりません。
とはいえ、事態終息の糸口も見えない今、自分が保有している資産の評価額が下がっていくのを見るのは、ゲームでHPが減っていくのを見てドキドキ、ハラハラするのに似ています。

ゲームであれば自分でなんとかできますが、株価は自分の力で何も出来ません。
その何も出来ないことに対して指を咥えて眺めるだけ、という状況に気持ちが耐えられなくなってしまい、売却することは避けたいです。
下落時は購入数量が増える
ドルコスト平均法の威力が発揮されるのは下落時で、S&P500の値が減少しているということは、毎月購入している投資信託の購入単価も下がるということです。
毎月同じ金額を投資しているのであれば、購入可能な数量が多くなります。
たかしくんは500円を持っていました。昨日、八百屋さんで一つ100円のリンゴを五個買えました。
今日も500円を持っています。八百屋さんを覗くと、リンゴがなんと半額の50円で売られています。今日は十個買うことができました。
リンゴを毎日買うのか?食べきれるのか?消費税はどうなっているんだ?という話はさておき、単価が変われば500円で購入できる個数も変わります。
具体例として、2019年11月からつみたてNISA口座で毎月33,333円でeMAXIS Slim米国株式(S&P500)を積み立てた時の単価と数量を以下に示します。約定日は毎月27日前後です。

二月の約定までは、S&P500は大きく変動していなかったため、購入数量はほぼ同じですが、三月の下落で投資信託の購入単価も下がり、33,333円で購入可能な数量が一気に増えました。
購入可能な数量が増えている点がポイントです。以下に二つのシナリオを示してリターンの差を見てみます。
- シナリオ1:新型コロナウイルスや原油価格戦争はなく、株価は同水準だったとして、三月の購入数量は過去四か月の平均である28,156口とする
- シナリオ2:現在の購入数量
各シナリオで購入した投資信託の数量で投資信託の基準価額が13,000円になると、どのようになるでしょうか。
合計保有数量(口) | 評価額合計(円) | |
---|---|---|
シナリオ1 | 140,781 | 183,016 |
シナリオ2 | 146,781 | 190,815 |
差(2-1) | 6,000 | 7,800 |
シナリオ2の方が7,800円資産が多くなっています。理由は購入単価が低い時に多くの数量を購入できたので、シナリオ1よりも6,000口多く保有していることによります。
淡々と購入し続けることで、後の回復時にこのような効果を得ることができます。
当然のことながら、回復期間が一年なのか、それとも二年よりも長いのか、もしくは十年を超えるのか分かりません。ただ、現時点でいきなり売却に走る前に、深呼吸をしてドルコスト平均法について考えることはしてもよいと思います。
それでも我慢できないあなた、もう一つの記事で二十年積立を続けた場合のシミュレーションを行っていますので、こちらもご覧ください。