米国の株式市場には数多のインデックス/指標が存在します。
ダウ平均、S&P500など有名なもののひとつとして、NASDAQ100というインデックス名称は耳にしたことがあると思います。このNASDAQ100は、ETFであるQQQの原指標となっており、NASDAQ100の構成銘柄に投資をしています。
2023年7月7日に、NASDAQは7月24日にNASDAQ100の特別リバランス(Special Rebalance)を実施する旨のニュースをリリースしています。
通常、NASDAQ100の銘柄は毎年十二月に入れ替え、四半期おきにリバランスを実施しています。定期リバランスとは異なるタイミングでリバランスを行うことは1998年、2011年に続く三回目と稀な事もあり、ニュースとして取り扱われています。
NASDAQ100というインデックス
NASDAQ100という名称は広く知られ、分かった気でいたため、どのようなインデックスか調べたことがありませんでした。
改めて振り返ってみると「NASDAQに上場している」「米国内外の金融以外の企業から銘柄を選んでいる」という程度の知識しかなく、少し深掘りしてみます。
NASDAQ100とは
NASDAQの説明を借りると、NASDAQに上場している金融を除く大企業100社のパフォーマンスを測定するインデックスと、非常にシンプルなものです。
構成銘柄となるための条件
構成銘柄として選定されるための条件は、主に以下の通りです。
- NASDAQに上場している普通株、ADRなどで、REITは含まず
- もしも複数のクラスがある、つまり普通株、優先株が発行されている場合、全て対象
- 金融セクター以外の銘柄
- 日量で平均200,000株の取引があり、年間で三か月以上の取引がなされている事
S&P500と比較すると条件は緩く、時価総額の制限は無し、財務状況も破産していない事、と異なります。
構成銘柄入替
銘柄入替は、毎年十二月初旬にアナウンスされ、第三金曜日に市場が閉まった後に適用となります。
構成銘柄の割合は時価総額を基に決めており、リバランスは三月、六月、九月、十二月と四半期おきに行われますが、このタイミング以外にもNASDAQが必要と判断した時に実施されます。2023年7月のリバランスは久しぶりに必要と判断されたのでしょう。
今回の特別リバランスは株価上昇によるもの?
四半期毎に一回リバランスを行ってるにもかかわらず、今回NASDAQが必要と判断した理由は、NASDAQのニュースリリースでは構成割合の見直しで極度に集中が見られた場合という一般的な表現に留められています。そこでロイターの記事を見てみると、昨今の株価上昇が影響している模様です。
NASDAQでは、インデックス内の一銘柄の構成割合が4.5%を超え、その4.5%を超えた銘柄を足し合わせた時に、48%を超えた場合に見直しを行うとしています。
ロイターの記事によると、マイクロソフト(12.91%)、Apple(12.47%)、NVIDIA(7.04%)、Amazon(6.89%)、テスラ(4.50%)を足し合わせると48%の閾値を超えていないものの、リバランスにより、NASDAQの仕様に謳われている40%に抑えることを目指すのではないかと述べています。
Appleの時価総額は三兆円を超え、NVIDIAやテスラの株価は五月以降大幅に上昇してきています。
なお、NASDAQによると、今回のリバランスで銘柄の追加や削除は行われません。
リバランスの影響
インデックスの影響は広く及びます。
個人投資家にとって身近なものは、QQQといったETFへの投資やNASDAQ100を原指標とする投資信託の値動きです。構成割合が変わると、株式の売買が行われます。その値動きがどうなるかは読めません。
しかし、最も影響を受けるのは、現在構成割合が高いと判断されている銘柄です。上述のマイクロソフト、Apple、NVIDIA、Amazon、テスラがリバランスのために、投資信託などで売却されると株価が下がる恐れがあります。
一方で、割合を調整するために株式の購入も必要となります。極度に比率が下がっている銘柄が買われれば、その株価は上昇するでしょう。
このリバランスにより影響を受けるという話が、Barron’sの記事(有料会員で閲覧可能)で触れられています。キャシー・ウッドが運営しているARK Investが運用するETFは、基本的には未来のFAANGを狙える様な企業に投資し、ETFに組み入れられている大企業はテスラくらい。だから、今回のリバランスで小型株が買われるかもしれないので、ARKにとって好ましいことを含んでいます。
これを読んで疑問に思ったのは、「本当にそうか?」「ARKのETFに組み入れられる銘柄は、どれくらいNASDAQ100に組み入れられているのか?」
という訳で、ARKK、ARKW、ARKQをピックアップして調べてみました。NASDAQ100はQQQの銘柄を参考にしています。
ARK ETFの三つについては、QQQにある11銘柄が該当し、ARKQに多くの銘柄が組み入れられています。大企業はテスラだけではなく、マイクロソフトやMeta、Alphabetもある上に、NVIDIAもARKQを構成しています。
Company | QQQ | ARKK | ARKW | ARKQ |
---|---|---|---|---|
Microsoft Corp | 12.65% | 0.79% | ||
NVIDIA Corp | 7.34% | 2.84% | ||
Meta Platforms Inc Class A | 4.48% | 0.51% | 0.63% | |
Tesla Inc | 4.39% | 10.90% | 14.44% | |
Alphabet Inc Class C | 3.66% | 2.08% | ||
Advanced Micro Devices Inc | 1.21% | 1.53% | 0.48% | |
Intuitive Surgical Inc | 0.79% | 1.57% | ||
Synopsys Inc | 0.44% | 1.36% | ||
CrowdStrike Holdings Inc Class A | 0.22% | 1.13% | ||
Ansys Inc | 0.19% | 0.36% | ||
Zoom Video Communications Inc | 0.12% | 6.60% |
この表を眺めていると、Barron’sの記事が言っている程、ARK ETFに好影響を与えるか、と改めて疑問が大きくなります。いずれにしても、吉と出るか凶と出るか、気になることには変わりありません。
NASDAQ100の特別リバランスで構成割合はどうなったか
NASDAQ100の構成銘柄の全情報はNASDAQでは提供されていない様で、QQQの構成銘柄の推移がどのように変化したかを確認します。
全銘柄を列挙しているので、長いリストとなっています。7月24日時点と7月13日時点の銘柄を比較し、割合がどのように変化したかを示しています。
構成割合が減少したのは、Apple、マイクロソフト、Amazon、NVIDIA、テスラ、Alphabetでした。これにより、上位七銘柄で約40%となっています。依然としてApple、マイクロソフト、Amazonは4.5%を超えているものの、大分抑えた割合となりました。

そして、今回のリバランスで気になったのは、7月13日に構成銘柄として存在していたActivision Blizzardが除外され、The Trade Deskという広告プラットフォームを提供している会社が加わっています。
Activision Blizzardはマイクロソフトとの合併の話もあり、その影響により除外されたのかもしれません。
QQQは、2023年7月21日の終値が、375.63ドルでした。月曜日の24日は376.62ドルで始まっています。他の関連するETFなどは追いかけていませんが、気になる銘柄があれば個別に追いかけてみるのも良いでしょう。