モルガン・スタンレーのEトレード買収によるリテール事業本格化

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130億ドルの買収

米国時間の2月20日、モルガン・スタンレーがEトレード証券を130億ドルで買収するといったニュースが出ました。買収完了には承認が必要で2020年第4四半期の完了を目指しています。

これは、2008~2009年にかけての金融危機以降、ウォール街の銀行による最大規模の買収となります。

余談ですが、モルガン・スタンレー、Eトレード共にS&P500の構成割合は以下の通りです。(小数点以下第三位を四捨五入)

  • モルガン・スタンレー:0.25%
  • Eトレード:0.036%
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各社の思惑を推測

このニュースの後、Eトレードの株価は24%上昇したのに対し、モルガン・スタンレーの株価は4%下落しています。

Eトレードは、2019年11月にチャールズ・シュワブに260億ドルで買収されたTDアメリトレードと比較しても、売上規模は小さいです。Eトレードが買収されたことは肯定的、反対にモルガン・スタンレーにとってはなぜ買収したのか、という評価とも読み取れます。

モルガン・スタンレーの思惑

モルガン・スタンレーは 主に法人を顧客としてきた投資銀行ですが、金融危機の後は、富裕層を相手にしたビジネスに軸足を動かし、2010年の富裕層向けの資産管理業務による税引き前利益が四分の一(26%)程度の割合だったものが、2019年には半分(51%)に達しています。

大きく報じられているのは、Eトレードの520万の顧客と3600億ドルの資産が、現在のモルガン・スタンレーの300万の顧客、2.7兆ドルの資産に上乗せされることが期待されていることです。これにより資産管理業務による税引き前利益の構成比が57%になると目論んでいます。

上記に加え、今回の買収で大きな費用削減効果ももちろん期待しています。

これまで手の届かなかった顧客層の獲得、インフラやシステムの共通化。さらにEトレードのリソース活用による費用圧縮などがモルガン・スタンレー側のメリットとして考えられます。

Eトレードの思惑

買収される側なので「思惑」という表現も適切ではありませんが、Eトレードにとっては渡りに船だったのではないかと推察されます。

過去の記事でも触れましたが、米国では新興の証券会社である「Robinhood」の参入により証券会社の手数料無料が加速し、上述のチャールズ・シュワブによるTDアメリトレード買収といった生き残りが熾烈になっています。

手数料無料が普及してくると、顧客獲得のために差別化が必要となります。その一つとして、例えばフィデリティやRobinhoodは、高額な株式を小分けにして買うことができるサービスを開始しています。

競合の追い上げが激しい中、Eトレードは手数料による収入が半分以上減り、売上も8%減少と苦しい状態にいた模様です。その状態の中で、Eトレードのリソースを活用できる場が買収により期待されます。

投資銀行のリテール参入

以上のように両社の思惑を想像してみました。世に出ている情報がモルガン・スタンレー側に偏っているがために、どうしても

「モルガン・スタンレーが実行中のビジネスモデル変革をより加速、確実なものにするために、Eトレードを買収して顧客基盤を含むリソースを吸い上げたい」

としか見えません。モルガン・スタンレーのライバルであるゴールドマン・サックスは数年前から個人向け金融に本格的に参入し、「マーカス(Marcus by Goldman Sachs)」といった融資サービスを立ち上げ、その後も金融機関の買収を行っています。

そして、個人向けサービスで最も有名なのは、Apple Cardの取扱いです。カードの保有者には信用スコアが低い人も多く、マーカスのノウハウも含まれているのかもしれません。しかしながら、こういった消費者向けの事業規模はゴールドマン・サックスでも小さく、収入に占める割合は2.4%で、営業経費は収入の85%に及ぶと言われています。

そのような中、2020年1月にゴールドマン・サックスは組織の再編を行い、個人向けに「Consumer & Wealth Management」と独立した部門を立ち上げています。事業の意気込みが伝わる再編です。

過去にはリーマンショックのタイミングで、バンク・オブ・アメリカがメリルリンチを買収し、投資銀行事業とリテール事業がひとつの金融機関行われているケースもありますが、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーは異なる方向ですが、消費者向け事業を本格化、加速させていきます。