メルペイのOrigami株式取得、そしてメルカリとドコモの業務提携は何を目指すのか

キャッシュレス
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メルカリのプレスリリースと決算発表

2020年1月23日の「株式会社Origamiのメルカリグループ参画に関するお知らせ」といった件名のプレスリリースから始まるOrigamiの買収。その後のドコモとの業務提携は、一旦否定はされましたが、2月4日に発表です。

2月6日はメルカリのFY2020 2Q決算説明が行われた日ですが、同日にはダイヤモンドオンラインが「メルカリへのオリガミ売却価格は1株1円、事実上の経営破綻で社員9割リストラ」という衝撃的な見出しの記事を配信しています。

上記に関連する内容についてメルカリは、二週間で合計4つのプレスリリースと決算を発表しました。関係者筋が情報源という第三者による記事が世に出ている中で、コード決済ビジネス、いわゆるキャッシュレスビジネスについてメルカリが何を目指すのかを考えてみたいと思います。

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メルカリの動き

1月23日からの流れ

まずは、上述の主なイベントを時系列に示します。

  • 1月23日
    • プレスリリース「株式会社Origamiのメルカリグループ参画に関するお知らせ」
    • プレスリリース「メルカリ・メルペイ、信金中央金庫との業務提携を締結」
  • 2月3日
    • プレスリリース「本日の一部報道について」(ドコモとの業務提携に関して)
  • 2月4日
    • プレスリリース「メルカリ・メルペイ・NTTドコモが業務提携に合意」
  • 2月6日
    • メルカリFY2020 2Q 決算説明会
    • プレスリリース「スマホ決済サービス「メルペイ」 ゆうちょ銀行と連携」
    • ダイヤモンドオンライン「メルカリへのオリガミ売却価格は1株1円、事実上の経営破綻で社員9割リストラ」

このスケジュールを見た上で、決算説明会での話を聞くと2月6日の決算発表に向け直前の二週間でニュースを出し、営業収益のマイナスに対する説明を用意したのではないかという印象を得ます。

メルカリの財務状況

FY2020 2Qの数字からメルカリの財務状況をまとめると以下の通りです。

  • 連結
    • 売上は184億円(前年同期比39%増)
    • GMV(総流通額)は1,683億円(前年同期比21%増)
    • 営業損益は-68億円
  • メルカリ事業(日本)
    • 売上は144億円(前年同期比18%増)
    • GMV(総流通額)は1,544億円(前年同期比20%増)
    • 営業損益は27億円(前年同期比10%減)/調整後営業損益は45億円(前年同期比50%増)

メルカリの本業は費用削減も功を成し好調ですが、メルペイがまだ投資フェーズにいること、米国事業は成長しているものの規模が小さいため、寄与があまりないという状態です。

メルペイの事業方針は「先行投資」「メルカリとのシナジー」「メイルペイ収益化」と三つのフェーズに分かれていて、2020年度は先行投資のフェーズ1であることを強調していました。

先行投資フェーズでの施策

先行投資フェーズでは、ユーザー数の確保をメルペイは目指しています。 取締役会長の小泉氏は「メルカリのユーザーをメルペイにシフトしていく」という表現をしています。

例えば、10月から12月にかけてキャンペーンがそれに当たります。メルペイの本人確認が完了しているユーザーと、キャンペーン期間中に新規でメルペイの本人確認を完了したユーザーに手数料の全額ポイント還元を行い、手数料を実質無料にするといった内容です。(メルカリは出品者へのポイント施策はありますが、購入者へのポイント施策は行っていません。)

これにより、Monthly Active Users(MAU:一か月あたりのアクティブユーザー数)が1,450万人規模のメルカリからメルペイ登録へユーザーを誘導、 現在600万人程度のメルペイユーザー数を拡大しようという計画です。

さらに、メルカリユーザーは地方の割合が高く、彼らからゆうちょ銀行利用を希望する要望が出ていたとのことです。そこで、メルペイは2月6日のプレスリリースにあるように、ゆうちょ銀行と連携を行うことで、メルペイへの誘導をしやすくことも狙っています。

Origami統合とドコモとの提携

Origami統合と信金中金提携

決算発表の中で小泉氏は「統合」という単語を使っていましたが、1月23日にOrigamiがメルカリグループに参画というプレスリリースを発表しました。

同日に、もう一つリリースがあります。2018年9月にOrigamiと信金中央金庫(以下、信金中金) は資本業務提携をしていたのですが、今回のOrigami統合に際して、メルカリグループが正式に信金中金と業務提携を行います。

小泉氏は、メディアではOrigami統合に注目が集まっているが、本来は信金中金との幅広い提携が狙いと伝えています。 都市部の加盟店が多いメルペイは地方の加盟店を獲得し、補完ができました。

加えて、全国の信用金庫を通じて加盟店開拓をはじめ、メルカリで行っているメルカリ教室を全国規模に拡大することも提携の背景に挙げられています。メルカリ教室でメルカリのユーザーを獲得し、それらをメルペイにシフトするという構図が描かれている模様です。

今回のOrigami統合では三つのポイントを掲げています。

  • 加盟店増加、手数料増収
  • ユーザ獲得効率化
  • 販管費早期合理化

三つ目の「販管費早期合理化」が興味深く、ここには「組織のスリム化、 オフィス統廃合等による固定費削減」とあります。キャッシュレス事業における拡大する費用を何とか早期に収束させたいという思惑が見え隠れします。

そこで気になるのが、先のダイヤモンドオンラインの記事にあるOrigamiの社員を9割削減という内容です。

一旦、もし、自分が統合をした側の会社だったらと考えてみます。組織のスリム化として人件費に着手する場合、この時点でいきなり相手側の社員を削減するかとなると疑問です。人を手放してしまうと、後にそのスキルが再び必要になった際、採用コストは無視できません。

自分であれば、急ぐ必要は理解しつつも、統合後に両社が保有しているスキルを棚卸し、描いている構図を精査した上で、人に関する施策を考えます。それ故この動きについては謎に感じています。

ただ、Origamiはキャッシュレスの先駆けであったものの、現在はビジネスの行き詰まりがあり、陳腐化しているという噂話もあったため、もし社員削減が事実だとすると、信金中金との業務提携をしやすくするためにOrigami統合をしたのではないでしょうか。

ドコモとの提携

後を追うように、ドコモとの業務提携が2月に入って発表されました。

資本提携は含まない、キャッシュレス決済とポイントサービス領域での業務提携です。キャッシュレス決済では、d払いとメルペイを連携し、加盟店の共通化を進めていきます。

ポイントサービスでは、dアカウントとメルカリIDを2020年5月に連携、メルカリで買い物をしたユーザーにdポイントを付与するといったサービスを予定しています。

情報を探っていくと、dポイントの年間利用が約2,000億ポイント、メルカリの年間流通総額が5,000億円で7,000億円相当の効果を期待している、dポイントクラブの会員が7,345万会員、メルカリの1,538万の月間利用者との相乗効果を見込んでいるとのことです。

単位が異なるものを無理やり足し算している感は否めないですが、PayPayや楽天経済圏を意識していることは伝わります。

メルカリのプレスリリースや決算発表資料にある、業務提携の概要は以下の5つです。

  • メルカリIDとdアカウント連携による顧客基盤の拡大
  • メルカリの利用でdポイントが貯まる、dポイントが使える
  • スマホ決済の連携で電子マネー残高、ポイント残高連携、加盟店の共通化と共同営業
  • ドコモショップ連携による、メルカリ教室や梱包サポートの全国展開
  • データを活用したマーケティング

蛇足ですが、資料には見当たらないものの、メルカリの出品者ポイントもdポイントに移管することは視野には入っているのでしょう。

概要を見ると、ポイントを使って顧客を囲い込んで、一次流通と二次流通でのキャッシュレス決済を増やし、各社で保有しているデータを使って、良いユーザー体験となる有用な広告配信を効率的に行い、さらに購買につなげる点と、加盟店開拓の効率化の二点を考えているのが推察されます。

メルカリが目指すもの

両社との統合・業務提携で何を狙うのか

メルカリの決算発表では、今回の統合・業務提携でメルカリとメルペイへどのような影響があるかを「各事業への影響」として整理しています。下記は決算資料から転載したものです。

  • メルカリへの影響
    • ドコモと購入施策を共同で実施するとともに、当社は出品施策への注力を上げていくなかで、広告宣伝費の効率化
    • ドコモ・信金中金のネットワークを活用し、オフライン出品施策の強化(メルカリ教室等)
  • メルペイの影響
    • ユーザ獲得:ドコモ・Origamiユーザを効果的に取り込むことにより広告宣伝費の負荷軽減
    • 加盟店獲得:ドコモ・Origamiの既存加盟店の追加。今後はドコモ・信金中金のネットワークを活用し、メルペイ単独での小規模加盟店開拓を停止
    • 固定費:採用活動は限定し、人員数のコントロールを強めていく

経費削減が強調されています。

都市部と地方の加盟店の補完、ユーザー・顧客の囲い込みとよりよいユーザー体験、さらなる顧客基盤の拡大と想像してきました。一方で、決算発表ではOrigami統合の箇所で「FY2020 4Q以降メルペイの追加赤字負担が生じることはない」という方針を出していることに鑑みると、とにかく費用を圧縮します、と宣言せざるを得ないのでしょうか。

営業損益でのマイナス68億円をこれ以上大きくすることはできないし、規模の拡大には投資が必要だし、提携を通じて費用負担を軽減する方向にしたのではないかと思います。

業務提携をするドコモのメリット

最後に改めて、メルカリが今回の統合・業務提携を通じて狙いとしていることを自分なりにまとめると、次のようになります。

  • Origami統合で信金中金との業務提携への足掛かりを作る
  • 信金中金との提携で地方の加盟店を確保し、開拓の効率化を進める
  • ドコモとの提携により顧客基盤と加盟店拡大の費用を抑える

となると、メルカリと提携するドコモにとってのメリットが分からなくなってきました。ドコモにとってのメリットは今後自分なりに考察して、記事にしたいと思います。

考察記事: