米国配当ETFを探すシリーズ。JEPIの記事を書いている中で「これは記事にしておこう」と思ったETFがあります。
それは、Nasdaq 100 Covered Call ETF (QYLD) です。
このETFは名前の通り、NASDAQ100のカバードコールのETFなのですが、JEPIと似たようなものなのか、気になります。
また、話は変わって、NASDAQ100のカバードコールETFが存在するのであれば、S&P500のカバードコールETFというものがあっても良いのではないでしょうか。
これまで、日本から気軽にカバードコールETFで運用をしようとするとQYLDくらいしか選択肢がありませんでした。しかし、楽天証券から2021年11月5日からQYLDを運用しているGlobal XのETFを新たに扱うというお知らせが出されています。
新規取り扱い銘柄の中にS&P500のカバードコールETFである、S&P 500 Covered Call ETF (XYLD) が含まれ、選択肢が増えました。
丁度良い機会なので、QYLD、XYLDがどのようなETFなのかを確認したいと思います。
【注意】本銘柄は個人の意見として記載しているのみで、推奨されるものではありません。ETFの商品内容を確認した上で、ご自身の責任で投資判断を下してください。
VOICEROID動画解説
VOICEROIDでQYLDの特性を解説していますので、ぜひご覧ください。
QYLD、XYLDはどのようなETFなのか
ETF情報
まずは、ETFの情報を見てみましょう。
QYLD | XYLD | |
---|---|---|
運用会社 | Global X | Global X |
設定日 | 2013年12月11日 | 2013年6月13日 |
取引所 | Nasdaq | NYSE Arca |
経費率 | 0.60% | 0.60% |
ベンチマーク | Cboe Nasdaq-100 BuyWrite V2 Index | Cboe S&P 500 BuyWrite Index |
どちらのETFも設定日が2013年で、比較的長く運用されている商品となります。
経費率は0.60%と、変わり種のETFとしてみればとりわけ高額という訳ではないですが、JEPIの0.35%と比較をすると高めに感じてしまいそうですが、JEPIの経費率が引くというのが適切な表現になると思っています。
ベンチマーク
QYLD、XYLD共に聞き慣れないベンチマークを設定しています。
「聞き慣れない」と言ってもCboeには聞き覚えがある方もいるでしょう。シカゴ・ボード・オプション取引所を運営しているCboe Global Markets, Inc.です。そして、この「CBOE」で思い出すのが、恐怖指数。
恐怖指数は、S&P500のオプション取引を用いて算出され、市場の不確実さを示すものとなっています。別記事にてこの指数について書いていますので、ぜひご覧ください。
カバードコールとは
カバードコールをかいつまんで説明すると、オプション取引を使った投資手法で、原資産を持ちながら、持っている原資産のコールオプション(買う権利)の売りを行うことを言います。
コールオプション(買う権利)の買い手がその権利を行使すると、カバードコールの売り手はプレミアムと言うオプション料を受け取りますが、手持ちの原資産を売る義務が発生します。
この取引は、通常の株式取引での売却と異なり、あらかじめ約束した価格での売却をしなければならないことです。その価格は市場価格を上回るとは限りません。代わりとしてプレミアム収入を受け取ります。
カバードコールについて、JEPIの記事で説明をしていますんので、詳細は下記の記事をご覧ください。
QYLD、XYLDの特徴
構成銘柄
両ETFの構成銘柄を、Global Xのサイトで確認すると、NASDAQ100、S&P500の構成銘柄と同じであることが分かります。
同時にカバードコールETFであるため、コールオプション取引を用いて運用しています。
値動き
このカバードコールETFで知っておきたいのが値動きです。
QYLDとNASDAQ100のETFであるQQQの株価の動きは以下の通りです。(参考:2021年11月26日のQYLD株価は22.35ドル)
XYLDとS&P500の推移も以下に示します。(参考:2021年11月26日のXYLD株価は49.46ドル)
上記チャートの線を見て分かるように、値動きがかなり異なります。
QYLD、XYLDはカバードコールを活用しているので、下落、上昇ともに値動きは控えめになると言われていますが、実は過去のデータを見てみると、下落はそれなりの影響を受けるものの、回復は緩やかになっています。
このようにかなり動きが異なることは理解しておく必要があるでしょう。
配当金
カバードコールETの大きな特徴は高配当。そこで配当金を確認します。2020年1月~2021年10月までの一株当たりの配当金をまとめています。
QYLD | XYLD | |
---|---|---|
2020年 | 2.320988 | 3.277016 |
2021年(~10月) | 2.363393 | 4.164765 |
合計 | 4.684381 | 7.441781 |
また、両ETFの当該期間における配当金推移は以下の通りです。XYLDは2020年後半から配当金単価が増えているのに対し、QYLDは大きな変化がありません。
もう少し、データを見てみます。下記チャートはQYLDの全期間の配当金単価推移を示しています。それに対し、全期間の配当単価の平均値と標準偏差を算出し、線を加えてみると、QYLDの配当単価のばらつきが大きくないことが分かります。
配当を支払う個別銘柄では、増配や減配といった事が発生するのですが、QYLDやXYLDは、後述する配当金原資の捻出方法により安定的な金額の配当金となっています。
「配当」から見える特徴
ネットを見ていると、QYLD、XYLDを保有している人の意見として、NASDAQ100が上がっているのに、QYLDが上がらないというものを時折見かけます。
QYLDはNASDAQ100で構成されているし、配当金が毎月支払わる。しかも配当利回りが高いとなると、買わない理由はありません。
しかし、それほどおいしい商品であれば、誰もが購入するでしょう。そうとはなっていない理由を考えます。
「配当」
Global Xが公開している利益の分配に関する情報を掲載します。
各銘柄に三つのパーセント表記があります。
実は株式配当に相当するものは最上部の「30-Day SEC Yield」になります。一方で、「12-Month Trailing Yield」「Distribution Yield」が投資家が受け取る「配当」と呼ばれるものになります。
カバードコールETFと言われるようにQYLD、XYLDはオプション取引のプレミアムで利益を上げて投資家に分配を行っています。それが高配当の理由となると同時に、配当金額が右上がりに増え続けたり、変化がないことの理由にもなります。
オプション取引が故の特徴
このようにオプション取引で運用しているETFであるため、以下の様な事も考慮をしておいた方が良いと考えます。
- 配当利回りはプレミアムの利益に依存。そのため、個別銘柄の増配の影響を受けにくい。
- オプション取引を活用しているので、現物の株価と連動しない。特に上昇時は恩恵を受けにくい。
見方によっては、かなり特殊な商品であるといえます。
QYLD、XYLDで運用をしたい人
利益の分配を高配当と言う形で毎月受け取れる代わりに、増配の期待を持ちにくく、値動きも大人しい特色があるQYLD、XYLDを買う人はどんな人か想像すると、JEPIを購入する人の像と重複しそうです。
JEPIの記事では、以下の様な人物像を想像しました。
退職で退職金や年金の脱退一時金などでまとまったお金はあるけど、若いころに投資をしてこなかった、今更になって、まとまったお金を減らしたくないし、少しでも手元の現金を確保したい
また、FIRE (Financial Independence, Retire Early) を目指す方には、向いているのかどうかを考えてみると、種銭がある程度あり、上昇益を気にせず、代わりに定期収入に重きを置く場合は選択肢になりそうです。しかし、個人的には運用する時間が確保できるのであれば、上昇を狙える商品の方が良いと考えています。
最終的には運用する方の投資方針に依存するので、調査をした上で判断を下してください。