米国配当ETFを探すシリーズでは、カバードコールETFも紹介しています。QYLD、XYLDとくれば、RYLDの紹介になりそうですが、残念ながら楽天証券ではRYLDを扱っていません。
しかしながら、2022年2月23日にダウ平均を対象としたDJIAが運用開始となり、楽天証券でも4月14日から取り扱い開始となっています。加えて、マネックス証券でも取り扱いがあります。
カバードコールETFで、対象指数がダウ平均なだけの様に見えるDJIAとはどんなETFなのでしょうか。運用をしている、Global Xは本ETFについてどのように語っているのかを見てみます。
【注意】本銘柄は個人の意見として記載しているのみで、推奨されるものではありません。ETFの商品内容を確認した上で、ご自身の責任で投資判断を下してください。
VOICEROID解説
DJIAの解説動作を作成しています。ぜひご覧ください。
DJIA
DJIAの正式名称は、Dow 30 Covered Call ETFと言います。名前の通り、ダウ平均を対象としていることが分かります。
まずは、このETFの情報を見てみます。
DJIA | |
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設定日 | 2022年2月23日 |
経費率 | 0.60% |
総資産 | 1,040万ドル |
銘柄数 | 31 |
インデックス | DJIA Cboe BuyWrite v2 Index |
当初設定が2022年2月23日なので、本記事の初稿を書いている4月23日から見ると、まだ二ヶ月という若いETFとなります。
若いだけあって、総資産は1,040万ドルで、これからという印象です。
DJIAは「DJIA Cboe BuyWrite v2 Index」とCBOEが提供するインデックス/指数に連動を目指しますが、QYLDやXYLDといったカバードコールETFと同様に、ダウ平均を対象としたDJXというインデックスオプションを活用しています。
カバードコールとは
カバードコールは、オプション取引を使った投資手法で、原資産を持ちながら原資産のコールオプション(買う権利)の売りを行う取引です。
コールオプション(買う権利)の買い手がその権利を行使すると、カバードコールの売り手はプレミアムと言うオプション料を受け取りますが、手持ちの原資産を売る義務が発生します。
この取引は、通常の株式取引での売却と異なり、あらかじめ約束した価格での売却をする必要があります。その価格は市場価格を上回るとは限りませんが、プレミアム収入を受け取り、それが収入となります。
カバードコールについての説明は、JEPIの記事で行っていますので、ぜひご覧ください。
ダウ平均
ダウ平均と呼ばれるものには、ダウ工業株30種やダウ輸送株20種平均といった指数がありますが、DJIAはダウ工業株30種を対象としています。
この指数も現在は、S&P Dow Jones Indices、つまりS&P Globalから提供されています。その歴史は1896年にチャールズ・ダウが構築したところまで遡り、百年以上の歴史を刻んでいます。
株価平均型
ダウ平均は株価平均型指数と呼ばれるもので、日経平均と同じであるのに対し、S&P500とは異なります。この説明を日本取引所グループの説明を引用すると以下の通りです。
「株価平均型」の株価指数とは、計算の対象となっている銘柄(これを「構成銘柄」といいます)の個々の株価を足しあわせ、それを一定の数で割ることにより、いわゆる「平均株価」として計算されるものです。日本経済新聞社が算出、公表する「日経平均株価 (日経225)」はこの計算方法を採用しています。
日本取引所グループ
「株価平均型」の計算式
株価指数の値 = 構成銘柄の株価の合計 ÷ 一定の数
計算方法はシンプルです。一言付け加えると、「一定の数(除数とも呼ぶ)」がこの株価指数の肝になっており、指数として連続性を持たせるために重要な役目を果たしています。
ダウ平均銘柄選定
ダウ平均銘柄の選定基準は、他の指数とは異なり、定性的なものです。S&Pのメソドロジー資料で日本語訳を見つけたので、それを引用すると以下の記載の通りです。
銘柄選択は定量的なルールに従ったものではありませんが、採用銘柄は主として、企業の評判が高く、持続的な成長を達成し、多くの投資家が高い関心を示すものに限られます。
S&P Dow Jones Indices
この他に、セクター構成を考慮したり、構成銘柄の株価の差異を見たりしています。加えてダウ平均銘柄は米国で設立され、米国に本社がある企業となります。
銘柄:セクター構成
銘柄
ダウ平均の銘柄がS&Pのサイトでは見つけられず、ここではDJIAの情報を使って、銘柄を確認します。
「ダウ工業株30種」という名前の通り30銘柄。金融やITも含め聞き覚えのある銘柄が並びます。マイクロソフトは上位にあるものの、テクノロジー関連が常に上位にあるという訳ではなさそうです。
セクター構成
セクター構成はS&Pから引用します。
銘柄を眺めた時に、テクノロジー関連は常に上位に無いと触れていますが、セクター構成割合では最も高いセクターとなっています。
テクノロジーとコミュニケーションを合わせた割合が約25%で、S&P500では両者の合計割合が三割を超えることから、テクノロジー関連への偏りはやや控えめと言えそうです。
ダウ平均でのカバードコールETF
ダウ平均について見てきましたが、個人的に思ったのが、QYLDでもXYLDでもインデックスオプションの対象が異なるだけで、プレミアム収入を得るという面では大きく変わらないのではないか、ということ。
とは言っても、QYLD、XYLDともに運用成績は異なるので、原資産となっている指数の影響も受けるのであろう。と考えるとダウ平均を対象とするDJIAにも何か特色があるのではないか。
そこで、Global Xの説明を見てみます。
同社の、Introducing the Global X Dow 30 Covered Call ETF (DJIA)という記事を読んで、私が理解したことは以下のふたつです。
- テクノロジー関連の割合がS&P500やNASDAQ100よりも小さいため、他セクターの恩恵を受けることが出来る可能性がある。
- 現在の様な金利上昇局面では、債券にあるようなデュレーションリスクを気にする必要がない。
前者は、カバードコールETFでも大きな恩恵となるのかは不明ですが、ダウ平均はNASDA100やS&P500と比較するとテクノロジー関連の割合が小さいだけではなく、金融も約15%とそこそこあるため、金利上昇局面では金融セクターの利益を享受できるという事です。
後者は、カバードコール戦略は、債券投資にある様なデュレーションリスクと言われる、平均回収期間の心配や金利と債券価格の感応性を気にしなくてよいだけではなく、株式そのものも金利の影響を受けることがあるところを、カバードコールのプレミアムで収入を得ることが出来るという事です。
ただ、これのGlobal Xの長い説明を見ても、各論点をつなげる話が良く分からず、腹落ちしません。
パフォーマンス
説明を理解するよりも、実際の株価の動きを見た方が早そうです。
DJIAの株価は2022年4月22日時点で24.99ドルでした。
また推移も見てみます。DJIAの株価にQYLD、XYLDの株価を重ねて比較すると、約二ヶ月の株価は僅かながら、QYLD、XYLDを上回っています。線の動きが激しいのはQYLDであるのに対し、DJIAは比較的おとなしそうです。
分配(配当)金
最後に分配(配当)金です。
今のところ2022年3月29日と4月26日の二回が確認可能で、各回の金額は約20セントでした。この水準が維持できれば、年間で2ドル強で、悪くない水準にあると言えます。
カバードコールETFの違いが理解し難くなってきた
NASDAQ100を対象としたQYLD、S&P500を対象としたXYLDを並べた時には、あまり気にしていなかったのですが、DJIAが登場してカバードコールの違いが分かりにくくなってきました。
各指数を対象とする現物のETFであれば、各指数の性質や特徴で投資方針を練ることは出来るのに対し、カバードコールETFの主な収入源はプレミアムです。各インデックスオプションのプレミアムは現物の運用のように特色が現れるのか、疑問に感じています。
とはいえ、楽天証券でもDJIAが取扱われたのは、選択肢という面で喜ばしいことです。あと、欲を言えばRYLDの登場を待ちたいところです。