米国配当ETFの銘柄を問えば、「SPYDだよね」という回答は少なくないと思います。実際、SPYDの日本語での情報量も多く、興味、関心のある人は一定数存在するでしょう。
そこで、SPYDではない配当ETFを天邪鬼的に探してみようというシリーズ第六弾。
今回は「ウィズダムツリー 米国株クオリティ配当成長ファンド(DGRW)」
個人的には、あまり聞き覚えがなかったのですが、総資産額は大きいこともあり、どのようなETFか見ていきます。
【注意】本銘柄は個人の意見として記載しているのみで、推奨されるものではありません。ETFの商品内容を確認した上で、ご自身の責任で投資判断を下してください。
VOICEROID動画解説
本DGRWをコンパクトに説明する動画も作成していますので、記事と合わせてご覧ください。
ETF基本情報
最初にETFの基本情報を確認します。
DGRW | |
---|---|
設定日 | 2013年5月22日 |
経費率 | 0.28% |
総資産 | 70億9,215万ドル |
配当利回り | 1.73% |
配当金支払い頻度 | 毎月 |
銘柄数 | 300 |
インデックス | WisdomTree U.S. Quality Dividend Growth Index |
第五弾で紹介したQDIVの配当利回りが少ないことに触れましたが、その数値を更に下回る利回り。毎月と言うのを魅力に感じるかがポイントになりそうです。
一方で、設定日が2013年と長く運用されていて総資産が大きいETFです。この規模の総資産を有するETFをいくつか探すと、有名どころでは以下の様なものがあります。
- SPYD – 52億8,000万ドル
- QYLD – 54億5,000万ドル
- HDV – 75億7,000万ドル
株価推移
DGRWの2021年12月23日時点の株価は、65.07ドルでした。DGRWの推移を過去五年間でS&P500と比較してみると、2020年3月まではDGRWがS&P500を上回っていたものの、その下落を境に回復時には逆転が発生しています。

DGRWがベンチマークとする指数
DGRWの目論見書に、本ETFがベンチマークをする指数が書かれています。その名も「WisdomTree U.S. Quality Dividend Growth Index」と言うもので、同じ会社から出されている指数ということが分かります。他社が提供している指数の連動を目指すケースが多いので、珍しいという印象を得ました。
WisdomTree U.S. Quality Dividend Growth Index
指数に組み入れられる条件
WisdomTreeには、複数の米国配当インデックスがあり、「U.S. Quality Dividend Growth Index」はその内のひとつです。この指数がどのようなものか。同社の説明には、配当金を支払う成長性のある会社で構成されるとされています。
その条件の概要は以下の通りです。
- 米国の株式市場に上場している
- 米国で登記、本社があること
- 配当を過去12ヶ月の間に支払っていること
- 時価総額が最低1億ドル
- 過去三ヶ月間に日次の取引量の平均が最低10万ドルあること
- REITを含む
上記に加えて、財務健全性などでの足切りもりあります。
組入比率
組入比率の決まり方は、時価総額ないしは、均等であるケースが多いのですが、この指数が興味深いのは、配当により決まる、という点です。
配当金に発行株式数を乗じて、各銘柄が支払う総配当額で比率が算出されます。
また、一社当たりの比率上限は5%、セクター上限は20%ですが、テクノロジーセクターの上限は25%で、不動産は10%としています。
組入銘柄
DGRWの構成銘柄は300銘柄あります。上位十銘柄は以下の通り。
銘柄 | 構成割合(%) |
---|---|
Apple Inc | 4.99% |
Johnson & Johnson | 4.62% |
Microsoft Corp | 4.61% |
Procter & Gamble Co | 3.52% |
Philip Morris International Inc | 3.25% |
Coca-Cola Co | 3.17% |
Merck & Co Inc | 2.97% |
Altria Group Inc | 2.88% |
Home Depot Inc | 2.64% |
Cisco Systems Inc | 2.61% |
上位十社の顔触れは全て知っている会社で、個人的には余力があれば保有をしたい銘柄もあります。
セクター構成
セクター構成を確認すると、テクノロジーが最も大きく、生活必需品、資本財と続いています。金融の割合が小さいのが意外でした。

配当金履歴
配当金履歴を確認します。2013年の当初設定から支払われています。月当たりの推移は傾向は掴みにくいですが、支払い状況は下記チャートの通りで、平均するとひと月、一株当たり7セント弱です。

傾向を見やすくするために、各年の推移を示します。増配し続けていると言って良いでしょう。

VIGの毎月配当版(?)と思った
DGRWを見てきました。私の印象は「VIGが毎月配当になった?」と言ったものです。
そこで、VIGと基本情報を比較してみます。VIGの株価がDGRWの約2.5倍で、総資産も10倍くらいの差があるのが大きな差異です。
DGRW | VIG | |
---|---|---|
株価(2021年12月23日) | 65.07ドル | 168.83ドル |
設定日 | 2013年5月22日 | 2006年4月21日 |
経費率 | 0.28% | 0.06% |
総資産 | 70億9,215万ドル | 774億ドル |
配当利回り | 1.73% | 1.65% |
配当金支払い頻度 | 毎月 | 四半期 |
銘柄数 | 300 | 268 |
インデックス | WisdomTree U.S. Quality Dividend Growth Index | S&P U.S. Dividend Growers Index |
上位の組入銘柄は四銘柄の重複でした。全体では124銘柄が重複で、思ったほど重なっている訳ではありません。
DGRW銘柄 | VIG銘柄 |
---|---|
Apple Inc | Microsoft Corp |
Microsoft Corp | Home Depot Inc |
Johnson & Johnson | JPMorgan Chase & Co |
Procter & Gamble Co | UnitedHealth Group Inc |
Philip Morris International Inc | Johnson & Johnson |
Coca-Cola Co | Procter & Gamble Co |
Merck & Co Inc | Visa Inc |
Altria Group Inc | Costco Wholesale Corp |
Cisco Systems Inc | Comcast Corp |
Home Depot Inc | Accenture plc |
最後に、両者の株価推移を確認。銘柄の重複は半分程度であるものの、株価はほぼ同じ動きをしています。

ここまで見てくると、どちらを選択するかは、かなり悩みどころになると思います。
- 経費率が高いけど、毎月配当に魅力 → DGRW
- 株価が手ごろで、米国株積立がしやすい → DGRW
- やはり、経費率と安定の総資産 → VIG
といった視点で選ぶという事も出来そうです。
また、マネックス証券とSBI証券では本ETFの買付手数料が無用であるため、定期的に買い増しを検討するには、手数料の要素も無視し難いと思います。
ただし、繰り返しとなりますが、銘柄の選定は各人の資産や運用状況、方針に依存をするため、投資の前の調査は忘れずに行ってください。