保有はしていたけれども、過去のブログ記事で言及してこなかった銘柄の話です。
記事に書いてこなかったのは、旬の頃は情報更新が早く、追い付けなかった事。加えて最近は株価が低迷し過ぎて書く気持ちも萎えていた事が理由です。
チャートを見ると、SPAC(特別買収目的会社)の頃は過熱気味と思える40~50ドルの値が付いており、HYLNのティッカーで上場してからは、飛行機の着陸の軌跡とも言えそうな下降線を描き、2022年は3ドル台を推移しています。

2020年はテスラがS&P500に採用されたり、米国の郵政公社(USPS)の次世代配達トラックの入札などもあり、EVのスタートアップが話題に挙がりました。USPSにまつわる銘柄と言えば、Workhouseで、同社に関する記事は書いていました。
EVだけではなく、燃料電池車も盛り上がっており、NIKOLAというテスラの相棒みたいな名前の会社も上場したりと市場は過熱気味でした。
余談ですが、NIKOLAの創業者であるTrevor Miltonは、株価を上げるために虚偽を図っていたことで2022年10月に有罪となっており、同社は遡ること2020年9月にGMと戦略的パートナーシップを組んで再起を図っています。
さて、激動の2020年に上場したHyliionはどのような会社か見ていきたいと思います。
現在の主力商品はハイブリッド
水素を使った燃料電池を前面に推し出していたNIKOLAとは異なり、Hyliionは一気に燃料電池に進むという戦略を採っていません。
燃料電池は水素ステーションのインフラ構築が大変です。米国内で長距離トラックの燃料を賄える水素ステーションインフラはまだ整っていません。
そのためHyliionは段階を踏んで商品を普及させようとしています。
現在の主力商品はハイブリッドシステム。2021年第4四半期からは、次世代のHybrid eXが会社の売上に貢献しています。
なお、このハイブリッドシステムは既存のトラックに装着、ないしはOEMという形で販売されています。
次世代の商品はガスが燃料
ハイブリッドの後続として開発が進んでいる製品はERXと呼ばれ、2023年下半期の量産を目指しています。
これも水素を使った燃料電池ではなく、Renewable Natural Gas (RNG/再生可能天然ガス)による駆動です。ハイブリッドの次に水素を使うのではなく、ガスを使用するのは、水素ステーションがまだ普及されないとHyliionでは見ていることによります。
一方、米国ではRNGは比較的容易に手に入ります。またERXは、RNGの代わりにCNGでも動作します。CNGステーションは整備されており、Hyliionでは燃料の入手のしやすさを重要視していることが分かります。
補足ですが、ERXはガスでトラックを動かすのではなく、ガスで発電して電力で走ります。日産のePowerの様なイメージのシステムです。
KARNOで水素が視野に
2022年8月にHyliionはGEの関連会社からKARNOジェネレーターを購入しました。
KARNOジェネレーターは「Fuel Agnostic Generator」と呼ばれています。しかし、Agnosticという単語の訳は難解です。調べてみたり、KARNOジェネレーターの特徴に鑑みると「万能」と訳すのが適切の様です。
KARNOジェネレーターは水素を含む、天然ガスやプロパンガス、そして軽油といった20種類以上の燃料で動きます。これだけ聞くと、バック・トゥ・ザ・フューチャーに出てきたゴミで動くデロリアンを思い出します。さらに、KARNOは発電して他の車にも共有可能で、通常の電力よりもコストが安くなることも売りとしています。
KARNOはERXが量産に入ったら、後追いで試験、認可取得で商品化予定との事です。そのため2024年以降に本格的な動きとなるでしょう。
ただ、個人的には、GEが開発していたものを新興のスタートアップが買って数年で商品化できるのか、疑問に感じる点は否めません。
上場後の軌跡
HyliionはSPACを使って、2022年10月にHYLNのティッカーで上場を果たしました。
上場後は決算発表が四半期ごとに行われますが、スタートアップ企業の場合、財務的な話よりも事業の進捗報告がメインとなることが多いです。
Hyliionも現在はハイブリッドシステムを販売しているとはいえ、KARNOの次の世代の駆動システムとなる水素による燃料電池システムまでは、まだまだ長い道のりと言えるでしょう。
2020年第3四半期からの決算発表には、開発状況や資金調達、主要ポジションの採用といった話が含まれています。
ここでは、決算発表のプレスリリースから、売上に影響を与えそうな動きをいくつか拾って紹介します。
- 2020年第3四半期:八台のハイブリッドシステムを納入
- 2020年第4四半期:七台のハイブリッドシステムを納入し、2020年は計二十台を納入
- 2021年第2四半期:Detmar Logisticsから300台のERXの予約受注
- 2021年第3四半期:Mone Transportから40台のERXを予約受注、またGreenPath LogisticとERXの試験運用のパートナー契約
- 2021年第4四半期:425台のERXを予約受注、Hybrid eXで売上を計上開始
- 2022年第1四半期:この時点で計2,000台のERXについて受注
一方で売上を上げても、大きな費用がかかる構造はスタートアップ企業では避けられません。2022年第3四半期では、200万ドルの売上に対し、費用は1億3,000万ドルとなっています。
保有株の状況
上述の通り、同社の最近の株価は3ドル前後。
私が最初にHyliion株式を購入したのは2020年12月で、その時の単価は19ドル。現在の株価は捉えようによってはバーゲンと言えそうですが、下落が急すぎて怖くなり、押し目買いはあまりしていません。
結果として、現在の平均取得価額は13.7198ドルとなっています。
手放すつもりは当面ない
主力商品を開発中の同社、ここで株を手放すのは躊躇われます。
2022年はERXの夏のテストをネバダ州にあるDavisダムで行っています。ここは猛暑という言うには生ぬるい酷暑の環境で、炎天下におけるERXの動作テストをしています。
また、冬にもテストを行う予定で、順調に進めば認可を取得し、晴れて量産化となるでしょう。
旬は過ぎたとはいえ、これからが面白く、しばらくは様子見となる銘柄と言えそうです。