S&P500の銘柄から投資対象を全米に拡大したら
前回の記事「S&P500という指数の性質」では、S&P500は時価総額加重平均型指数という指数であること、時価総額の大きな会社の影響を受けやすいことに触れました。さらにS&P500を基にしつつも時価総額の影響を除外したETFであるRSPのパフォーマンスについても比較しています。
現時点では通常のS&P500に連動しているSPYのパフォーマンスの方がRSPよりも僅かながら、よくなっていました。
2016~2017年のRSPのパフォーマンスがよかったのは、均等割合で投資しているため、成長が見込める小型株が寄与したと思われます。そこで、ふと考えたのが「小型株は成長が期待できるので、大型株中心のS&P500に投資するよりも米国の株式全体に投資した方がリターンは見込めるのではないか」ということです。
500銘柄対3500銘柄
まずは、ETFでパフォーマンスを比較してみます。S&P500連動のETFはSPY、IVV、VOOとありますが、前回の記事と同様にSPYを採り上げます。
比較対象となる全米株式のETFは約3,500社から成るバンガード・トータル・ストック・マーケットETF(VTI)です。今回もYahoo! Financeからチャートを拝借しています。

濃い青がSPY、水色がVTIです。
両方とも重なる様にほぼ同じ線を描いていますが、VTIの方が僅かながらパフォーマンスを上回っています。
「小型株が含まれていると成長が期待できる分、リターンがあるのでは」という上述の仮説に照らし合わせて、VTIにどれくらいSPYの銘柄が含まれているか重複を調べてみました。
- 重複銘柄数: 505
- 重複銘柄の構成割合: 83%
当然のことながら、VTIにはSPYの505社がすべて含まれます。SPYに含まれない残りの約3,000社は割合にして17%相当で、これら銘柄がSPYとは異なる線の動きになっています。ただ、一社あたりの構成割合は0.001%~0.295%の範囲にあるため、どれか数社が頑張って成長しても大きくETFの価格に影響を与えることはないと思われます。
S&P500と全米株式を対象にした投資信託
次に投資信託を見ていきたいと思います。
現時点で多くの方が気になるのは、S&P500をベンチマークとするのはeMAXIS Slim米国株式(S&P500)ではないでしょうか。対する全米株式は、楽天・全米株式インデックス・ファンドを挙げたいと思います。
パフォーマンスよりもむしろ特徴をまとめていますが、それらは以下の通りです。
eMAXIS Slim米国株式(S&P500) | 楽天・全米株式インデックス・ファンド | |
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ベンチマーク | S&P500 | CRSP USトータル・マーケット・インデックス |
信託報酬(税込) | 0.0968% | 0.132% |
純資産額 | 587.50億円 | 869.46億円 |
設定日 | 2018年7月7日 | 2017年9月29日 |
楽天・全米株式インデックス・ファンドが一年早く設定されていて、純資産額も時間に比例して大きいです。一方でeMAXIS Slim米国株式(S&P500)は急速に純資産額を増やしています。
投資信託の場合は、ベンチマークとの乖離が発生することがあります。その差は各ファンドの最新の運用報告書をみると、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)が+0.1%で、楽天・全米株式インデックス・ファンドが-0.5%でした。
投資信託はどちらを購入?
この記事を書き始めたきは「VTIの方がパフォーマンスが良いので、全米に広く投資するとリターンが期待できます」といった結末を考えていましたが、実際は大きな差はありませんでした。
投資信託に目を向けても、どちらかを決定づける特徴は個人的には見えません。信託報酬も冷静に計算すると、100万円の資産があったとしても年間で400円に満たない差額です。(この400円を真剣に議論する方もいますが)
現時点では、あなたご自身で検討し、好みで選んでも良いのではないでしょうか、と締めくくりたいと思います。