下落時の防衛を謳っているETFは効果を発揮?(動画解説あり)

動画解説(メカブ投資channel)

過去に、カバードコール戦略を採用しているETFをいくつか紹介しています。

カバードコール戦略を持つETFの特徴は、プレミアム収入による投資家への配当(分配)を目指しています。しかし、上昇益も同時に放棄せざるを得ません。そのため値動きの幅は控えめになります。

これらETFには、QYLD、XYLD、DJIAが挙げられ、各ETFはそれぞれNASDAQ100、S&P500、ダウ平均といった指数対象としています。

更に、カラーストラテジーを採用しているXRMI、QRMIというETFもあります。これらETFはコールオプションの売りだけではなく、プットオプションの買いも行い下落への対策も行っています。

この様な、やや特殊なETFは米国の主要指標を対象としていますが、値動きの線は似ていても、動きの値幅は異なります。

NASDAQ100を対象としたQYLDとQQQにおいては、もはや別物の様相です。

Yahoo! Finance(青:QYLD、ピンク:QQQ、過去二年の株価推移)

さて、バードコールETF、カラーストラテジーETFの値動きはそれぞれどうなるのか。また低ボラティリティを謳っている中でも、下落時の防衛を謳っているETFについても見ていきます。

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VOICEROID解説

本記事についても、VOICEROIDの結月ゆかりと東北きりたんによる解説動画を作成していますので、ぜひご覧ください。

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検証するETF

値動きを確認するETFは次の通りです。

  • VOO
  • XYLD
  • XYLG
  • XRMI
  • JEPI

S&P500の現物に連動するVOOをベンチマークとして、カバードコール戦略を採択するXYLD、XYLG。そして、カラーストラテジーを用いているXRMI。これらに加え、ELNを組入れているJEPIも一緒に見ていきます。

値動き

今回の検証は、各ETFの現在における下落相場の中での値動を確認するため、時間軸の起点は2020年1月からとし、終点は2022年6月17日としています。

また、各ETFの株価が異なるので、2022年1月の株価を1としています。

値動きの変化をチャートにしてみると、原資産に連動しているVOOの値動きが最も大きくなりました。

一方、カラーストラテジーを使っているXRMIは、下落への防衛としてプットオプションを扱っていることもあり、下落は小幅となっています。

ETF株価推移(2022年1月3日~6月17日)

意外に思ったのは、JEPIの成績が良かったこと。

JEPIはS&P500をベンチマークとし、基本的には組入銘柄をS&P500から選択するとしているものの、S&P500以外の銘柄を組み入れることがあるアクティブETFです。また、カバードコール取引も行っていますが、それはELNの中で行われています。因みに、ELNの組入は上限20%です。

こういった特徴を持つJEPIが今回の結果を導いているという事は興味深いです。

5,000ドルを投資したら

上述の値動きを踏まえ、2022年1月に、各ETFへ5,000ドルを投資してたらどうなるか見ていきます。

2022年1月3日終値で、各ETFを買い付けたとすると、以下の通りの株数となります。

買付単価株数投資額
VOO439.25114,831.75
XRMI26.721874,996.64
XYLD50.75984,937.50
XYLG31.701574,977.21
JEPI62.91794,969.89
買付単価と投資額の単位はドル

2022年6月17日時点の運用成果(評価額)は以下の通りです。なお、この試算は買付手数料を加味していません。

買付単価株数投資額評価額評価損益評価損益
(%)
VOO439.25114,831.753,717.45-1,114.30-23.1%
XRMI26.721874,996.644,222.27-774.37-15.5%
XYLD50.75984,937.504,144.42-829.08-16.7%
XYLG31.701574,977.213,997.22-979.99-19.7%
JEPI62.91794,969.894,179.89-790.00-15.9%
評価額は2022年6月17日時点、株数と評価損益を除き単位はドル

結果は、値動きの変化率を示したチャートと同じで、VOOの評価損が最も大きく、XRMIの評価損が最も小さくなります。

半年という短い期間ですが、2022年の年初めに「よし、ETFを買おう」と考え実行した場合、これら銘柄の中では、XRMIがメンタルに優しいという結果です。

配当(分配)金を加えると

評価額のみで判断するのも寂しいので、当該期間に受け取れたであろう配当(分配)金を加え、評価額と配当(分配)金での成績を見ます。なお、税金は考慮していません。

買付単価株数投資額評価額受取
配当/分配金
配当/分配金
込評価額
評価損益
評価損益
(%)
VOO439.25114,831.753,717.4515.11073,732.56-1099.19-22.7%
XRMI26.721874,996.644,222.27203.99834,426.27-570.37-11.4%
XYLD50.75984,937.504,144.42235.34704,379.77-593.73-11.9%
XYLG31.701574,977.213,997.22114.42164,111.64-865.57-17.4%
JEPI62.91794,969.894,179.89190.89564,370.79-599.10-12.1%
評価額は2022年6月17日時点、株数と評価損益を除き単位はドル

結果は評価額だけで見た時と異なり、順位に若干変化はあるものの、VOOの評価損益が最も大きく、XRMIの評価損益が最も小さくなっています。

配当(分配)金に注目すると、XYLDで受け取れる金額が高く、カバードコールのプレミアム収入による影響を感じます。

プレミアムは保険の様にリスクが大きくなると額が上がるため、株式市場の状況が寄与しているのではないかと考えます。

そのことを確認するために、XYLDの配当(分配)金の過去一年半の推移を見てみます。すると、S&P500が大きく下落した2020年後半と2022年に額が膨らんでいることが分かります。ETFの評価額を気にしなければ、このような相場の中ではキャッシュを多めに受け取れるETFがXYLDと言えそうです。

XYLD配当(分配)金(2020年10月~2022年6月)

カラーストラテジーは下落時に有効そう

半年という短い期間で、下落相場のみに着目した比較でしたが、カラーストラテジーを採用しているXRMIの「下落時の防衛(Mitigate risks of a major market selloff)」という宣伝文句は外れではない事が確認できました。

しかし、当然の事ながら今回の結果は、現物に投資をしているVOOが弱い、XYLDやXYLGの様にカバードコール戦略だけでは力不足、といったことまで示唆はしていません。

ETFへの投資は、長期間に及ぶものが多いと推察します。人生のどのタイミングで投資を始めたのか、その後成長を狙うのか、もしくはキャッシュフローを重視するのか。個人の投資方針に合わせて商品選択する必要があることは言うまでもありません。