2022年2月10日に、楽天証券がGlobal XのETFを二銘柄、新規で取り扱うというお知らせを出しました。
そのETFとは、QRMIとXRMIのふたつ。
2021年後半にアメリカ人の投資系YouTuber達が触れているのを見て、気にはなっていたのですが、当時、楽天証券での取り扱いはなく、それ以上積極的に情報を集めるという事はしていませんでした。
ところが、2022年2月16日から取引可能となれば、俄然興味が湧いてきます。
VOICEROID動画解説
説明動画も作成していますので、記事と合わせてご覧ください。
QRMI / XRMI基本情報
まずは、両ETFの基本情報を確認します。
QRMI | XRMI | |
---|---|---|
正式名称 | Nasdaq 100 Risk Managed Income ETF | S&P 500 Risk Managed Income ETF |
設定日 | 2021年8月25日 | 2021年8月25日 |
経費率 | 0.60% | 0.60% |
総資産 | 1,483万ドル | 1,967万ドル |
配当利回り | 0.11% | 0.81% |
配当金支払い頻度 | 毎月 | 毎月 |
インデックス | Nasdaq-100 Monthly Net Credit Collar 95-100 Index | Cboe S&P 500 Risk Managed Income Index |
設定日が2021年8月。この記事を書いている2022年2月時点なので、半年程度と非常に若いETFです。
また、経費率はQYLDやXYLDと同水準です。総資産は設定日から間もないこともあり、20億円に満たないため、流動性について気になる方は、今の時点で手を出しにくいかもしれません。
最後に、連動を目指すインデックスですが、ここで深追いすることは致しません。
リスクマネージドとは
QRMIとXRMIの正式名称
QRMIとXRMIの正式名称には、「Risk Managed」という単語が含まれています。
リスクをマネージするETFというのは、どういうことなのでしょうか。QRMIのページにある、ETF Summaryを読んでみます。
The Global X Nasdaq 100 Risk Managed Income ETF (QRMI) employs a protective net-credit collar strategy for investors seeking the income characteristics of a covered call fund, while mitigating the risks of a major market selloff with a protective put. QRMI seeks to achieve this outcome by owning the stocks in the Nasdaq 100 Index (NDX), while buying 5% out-of-the-money put options on NDX and selling at-the-money call options on the same index.
Global X
QRMIは、NASDAQ100を構成する株式を保有して、5%のOut-of-the-moneyのプットオプションの買いを行い、同時に、At-the-moneyのコールオプションの売りを行います。
QLYDはコールオプションの売りだけを行うの対し、QRMIはプットオプションの買いという取引が加わっています。
コールオプションとプットオプションを組み合わせ行う取引のことを「Collar Strategy」と呼びます。
新たに出てきた謎の言葉「Collar Strategy」とは?
Collar Strategyとは
Collarは襟の意味なのですが、ここでは鞭打ち症で首の周りに装着するコルセットのイメージが一番近いかもしれません。
名前の由来は良く分からないものの、値動きを範囲内にとどめる投資手法が、イメージされていると推測します。
プットオプション
プットオプションは、未来の期日までに、予め約束した価格での株式売却権利のことで、コールオプションとは反対となります。そして、QRMIとXRMIは売る権利を買い、売る権利の保有者となります。
例:どんな取引をするのか
プットオプションの具体的な取引を考えます。
- AさんがXYZ社の株式について、90ドルのプットオプションを買う。その時に5ドルのプレミアムを支払う。
- 期日にXYZ社の株が75ドルになったので、Aさんは、75ドルでXYZ社の株を購入し、同時にプットオプションの権利を行使。
- Aさんは、15ドルの利益を株式売買で得るも、プレミアムを支払っているので、最終的な利益は10ドルとなる。
空売りに似ている様に見えますが、オプション取引で権利を売買し、下落時にも利益を得る手法に見えます。
QRMI / XRMIが行う取引
コールオプションとプットオプション
QRMIとXRMIは対象のインデックスがNASDAQ100、S&P500の違いはあれども、行っている取引の基本的な考えは同じです。その要素は三つあります。
- 対象のインデックスの原資産を保有(NASDAQ100であれば、構成銘柄の株式)
- カバードコールで、一ヶ月のAt-the-moneyのコールオプションの売り
- 5% のOut-of-the-moneyのプットオプションの買い
コールオプションとプットオプションの両方を持つことで、上昇益の一部放棄をするものの、大幅な下落に対する守りを固めているというのが基本的な考え方です。そして、この手法がCollar Strategyです。
Collar Strategy
Collar Strategyの基本的な考え方を二つのシナリオを用いて見ていきます。
前提
補足情報としてプレミアムについて触れます。コールオプションは売りなので、プレミアムを受け取ります。一方、プットオプションは買いであるため、プレミアムを支払います。Collar Strategyでは、これらプレミアムは概ね相殺されるように取引されています。
ここでは前提として、株価が一株100ドルで株を購入し、90ドルのプットオプションを2ドルのプレミアムで買います。そして同時に110ドルのコールオプションを1.90ドルで売ったとします。プレミアムは概ね相殺されていますが、10セントの費用が発生しています。
コールオプションとプットオプションを行って、Collar(襟、コルセット)が設定されます。
シナリオ1. 株価が上昇した場合
この場合は、コールオプションが行使されます。株価が権利行使価格を上回ったとしても、権利行使価格の110ドルでの売却となり、現物取引で得られるはずの利益を全て享受することは出来ません。
また、プレミアムで費用が発生しているため、実際の利益は9.90ドル(= 10 – 0.10)となります。
シナリオ2. 株価が下落した場合
株価が権利行使価格を下回っていますが、既に株を100ドルで購入しているため、権利を行使しません。結果として、既に支払ったプレミアムの10セントが損益となります。(評価益は考慮していない)
QRMI / XRMIの株価推移
コールオプションとプットオプションを組み合わせた手法を用いた各ETFの株価はどのようになっているのでしょうか。2022年2月18日の終値は以下の通りです。
- QRMI:21.21ドル
- XRMI:25.09ドル
終値だけ見ても分かりにくいため、各ETFとインデックスとの比較をしてみます。設定来の推移を下記チャートに示します。
QRMI / NASDAQ100
XRMI / S&P500
下落時の防衛を行っているというものの、対象となるインデックスよりも下落幅が大きくなっています。設定日から日が浅い中で、直近の乱高下ではこのような動きになるのか、判断がつきません。
銀行預金の代わりになるのか
QRMIとXRMIを知った時、銀行預金の代わりになるのではないかと考えました。
コールオプションを使っているため、大きな上昇益は望めないものの、プレミアムによる利益の分配が望めること、加えてプットオプションによる下落時への守りも備えている。
限定的な範囲での値動きであれば、銀行預金的に余剰金を運用できるのではないか、しかも単に銀行に預けるよりもマシと期待をしてしまいます。
しかし、実際の値動きを見ると、今の時点で判断を下すのは難しいと感じました。
もう少し、動きを見てから判断をしても遅くはなさそうです。