日本人に、米国配当ETFの銘柄を問えば、「そりゃもちろんSPYDでしょ」という回答になると思います。SPYDの日本語での情報量も多くなるのもうなづけます。
そこで、天邪鬼的にSPYDではない配当ETFを探してみようというシリーズの第五弾。
今回は「グローバル・X・S&P・クオリティ・ディビィデンド・ETF (QDIV)」
個性的なETFを運用しているGlobal Xの商品ですが、どのようなものなのでしょうか。
【注意】本銘柄は個人の意見として記載しているのみで、推奨されるものではありません。ETFの商品内容を確認した上で、ご自身の責任で投資判断を下してください。
VOICEROID動画解説
QDIVをコンパクトに説明する動画も作成していますので、記事と合わせてご覧ください。
「○○DIV」は複数ある
Global X社からは、「○○DIV」という名のETFが三本あります。これらは、全て楽天証券での取引が可能となっています。
- グローバル・X・スーパーディビィデンド・US・ETF(DIV)
- グローバル・X・S&P・クオリティ・ディビィデンド・ETF (QDIV)
- グローバル・X・スーパーディビィデンド・ETF(SDIV)
ETF基本情報
基本情報を比較してみます。
DIV | QDIV | SDIV | |
---|---|---|---|
設定日 | 2013年3月11日 | 2018年7月13日 | 2011年6月8日 |
経費率 | 0.45% | 0.20% | 0.58% |
総資産 | 6億9,831万ドル | 4,232万ドル | 8億3,804万ドル |
配当利回り | 4.88% | 2.64% | 10.02% |
配当金支払い頻度 | 毎月 | 毎月 | 毎月 |
銘柄数 | 50 | 71 | 101 |
インデックス | Indxx SuperDividend U.S. Low Volatility Index | S&P 500 Quality High Dividend Index | Solactive Global SuperDividend Index |
並べてみると、QDIVが一番魅力的に見えない気がします。
株価推移
今度は株価推移を、QDIVの設定日である2018年7月13日から、三つのETFで比較をしました。

驚くべきことに、2018年後半の暴落からの戻りが強いのは、QDIVでした。そして追い打ちをかけた2020年三月の暴落からも値を戻しているETFはQDIVのみ。
DIVやSDIVの配当利回りが高く見えるのも納得です。
QDIVがベンチマークとする指数
Global Xのサイトを見ると、上述の通り、QDIVにはS&P 500 Quality High Dividend Indexというベンチマークがあることが分かります。経費等を控除する前の運用成果や配当利回りを、本インデックスと連動するようにします。
S&P 500 Quality High Dividend Index
では、S&P 500 Quality High Dividend Indexとはどのような指数なのでしょうか。S&P Globalのサイトで情報を確認します。
そこに書かれている概要は以下の様にとてもシンプル。
The S&P 500 Quality High Dividend Index is designed to measure the performance of S&P 500 members that exhibit both high quality and high dividend yield characteristics.
S&P Dow Jones Indices
雑に訳すと「このインデックスはS&P500銘柄から、高品質で高配当のものを測定しているよ」です。しかし、高品質(High quality)とはどういうことなのでしょう。
高品質で高配当の銘柄を選んでいますが、その基準は?
S&P 500 Quality High Dividend Indexに含まれるには
困った時は、「Methodology」の文書を探りましょう。どのようなことが書かれているでしょうか。
まず、この指数の銘柄となるには、S&P500銘柄である必要があります。
そして、指数の銘柄選定に際し、S&P500銘柄は配当利回りとクオリティスコアに基づいて順位付けがされます。その後、以下の基準から選定されるという流れになっています。
- クオリティスコアで上位200位に入っていること
- 配当利回りで上位200位に入っていること
なお、銘柄入替時に指数構成に必要な銘柄数は最低50で、50に満たない場合は条件を緩和します。その時、上位250位までに選ばれなかった会社のクオリティスコアを高い順に見ていき、50社になる様にすると記載されています。
ここで一番大きな疑問。クオリティスコアとは何なのか。それは、別資料を見るように記載されています。
S&P Quality Indices Methodology
S&P Quality Indices Methodologyという別資料のAppendixに算出の説明がありました。ただし、統計的な話に深く首を突っ込むことになりそうで、その手前で踏みとどまってみると、以下の三つを用いて算出していることが分かります。
- Return on Equity (ROE)
- Accruals Ratio
- Financial Leverage Ratio
ROEはともかくとして、ここまでくると専門外の身としてはかなり辛くなってきますが、クオリティスコアは一言で言うと「財務的健全性をスコア化して、順位付けを行っている」という事のようです。
組入比率
組入比率は均等となってます。ただし、セクターの上限は25%と定められ、超えないように調整を行っています。
組入銘柄
QDIVの構成銘柄は、2021年12月22日時点で72銘柄となっています。
均等の組入比率であるため、意味はあまりなしていませんが、上位十銘柄は以下の通りとなります。
銘柄 | ティッカー | 構成割合(%) |
---|---|---|
PFIZER INC | PFE | 1.55% |
NRG ENERGY INC | NRG | 1.51% |
PAYCHEX INC | PAYX | 1.50% |
NEWMONT CORP | NEM | 1.48% |
CIGNA CORP | CI | 1.46% |
CISCO SYSTEMS INC | CSCO | 1.46% |
CARDINAL HEALTH INC | CAH | 1.46% |
PUBLIC STORAGE | PSA | 1.45% |
MONDELEZ INTER-A | MDLZ | 1.45% |
THE COCA-COLA CO | KO | 1.44% |
聞いたことのある会社がいくつかあります。十位以下も、P&G、Lockheed Martin、3Mなど、配当銘柄としても挙げられる会社がありました。
セクター構成
セクター構成を確認すると、金融が最も大きく、資本財が続いています。セクターの並びは配当を重視したものとしてはよくあるものと言えるでしょう。

配当金履歴
最後に、配当金の支払い履歴を確認します。当初設定から安定的に支払われており、現在は一株当たり7セント弱の水準にあります。ひと月で7セントに満たないですが、年間で約80セントとなります。

QDIVの毎月配当にどれくらいの魅力を感じるか
以上の通り、QDIVを見てきました。
S&P500から配当利回りや財務が健全な会社を選んで運用する上に、配当金も安定して毎月支払いが行われています。また、DIVやSDIVと比較しても暴落からの戻りが強い。食指が動きそうです。
そう思いつつ、QDIVのファクトシートを眺めていると気になったことがあるので、それについて触れ、本記事を締めます。
本ETFのリスク特性を、S&P500と比較している箇所が気になりました。厳密には、指数のS&P 500 Quality High Dividend IndexとS&P500で比較を行っています。そこで目に入った二つの項目。
- Annualized Volatility
- S&P 500 Quality High Dividend Index:24.59%
- S&P500:22.03%
- Sharp Ratio
- S&P 500 Quality High Dividend Index:0.44
- S&P500:0.83
意外にも、QDIVが連動を目指している指数の方が、S&P500よりもボラティリティが高く、シャープレシオが低い。このファクトシートが2021年11月30日時点のものであるため、現在の株式市場の状況に鑑みると、S&P500の方が運用という面では有利で、実際に株価推移からもS&P500のパフォーマンスの良さが確認できます。

一方で、配当金狙いであれば、現物に投資をしながらも毎月配当がある本ETFは、候補になるかもしれません。
となると、個人的にはXYLDの方が効率が良く、魅力的に映ります。ただ、こういった考えは各人の資産や運用状況、方針に依存をするため、投資の前の調査は忘れずに行ってください。