米国配当ETFの銘柄を問えば、「SPYDだよね」という回答は少なくないと思います。実際、SPYDの日本語での情報量も多く、興味、関心のある人は一定数存在するでしょう。
そこで、SPYDではない配当ETFを天邪鬼的に探してみようというシリーズ第六弾。
今回は「ウィズダムツリー 米国株クオリティ配当成長ファンド(DGRW)」
個人的には、あまり聞き覚えがなかったのですが、総資産額は大きいこともあり、どのようなETFか見ていきます。
【注意】本銘柄は個人の意見として記載しているのみで、推奨されるものではありません。ETFの商品内容を確認した上で、ご自身の責任で投資判断を下してください。
DGRWは無名のETF?
かつて、SBI証券とマネックス証券ではDGRWの買付手数料が無料でした。しかしながら、これは恒久的なものではなく、SBI証券は買付手数料無料のETFからDGRWを除外し、マネックス証券でも半年に一回の見直しで同様の措置が取られています。
楽天証券はDGRWを買付手数料無料としていませんでした。
もはや買付手数料無料ではないDGRWはマイナーなのか、と心配になるかもしれません。
そこで、DGRWのポジションを確認するべくETFの総資産でのランキングを見てみます。もちろん、総資産でメジャーかマイナーを論じることは出来ませんが、参考になるでしょう。
下記表はVettaFiに掲載されている配当ETF一覧を総資産で並べ替えたものです。上位にはVIG、VYM、SCHDといった有名なETFが並び、DGRWは13番目。なお、平均取引量では、20位に位置しています。
総資産、取引量ともトップ10に入っていないことを、どの様に捉えるかは個人の感覚に委ねますが、マイナーではないと言えるでしょう。
DGRW基本情報
DGRWの基本情報を確認します。
DGRW | |
---|---|
設定日 | 2013年5月22日 |
経費率 | 0.28% |
総資産 | 76億5,911万ドル |
配当利回り | 1.91% |
配当金支払い頻度 | 毎月 |
銘柄数 | 301 |
インデックス | WisdomTree U.S. Quality Dividend Growth Index |
配当利回りは決して高いとは言い切れないものの、毎月配当金を受け取れることに魅力を感じるかがポイントになりそうです。
株価推移
DGRWの2023年1月20日時点の株価は、61.09ドルでした。DGRWの推移を過去五年間でS&P500、VIGと比較すると、現在はS&P500よりをやや上回るパフォーマンスである一方、VIGに僅かながら及びません。
DGRWがベンチマークとする指数
DGRWの目論見書に、本ETFがベンチマークをする指数が書かれています。その名も「WisdomTree U.S. Quality Dividend Growth Index」と言うもので、同じ会社から出されている指数ということが分かります。他社が提供している指数の連動を目指すケースが多いので、珍しいという印象を得ました。
WisdomTree U.S. Quality Dividend Growth Index
指数に組み入れられる条件
WisdomTreeには、複数の米国配当インデックスがあり、「U.S. Quality Dividend Growth Index」はその内のひとつです。この指数はどのようなものか。同社の説明には、配当金を支払う成長性のある会社で構成と書かれています。
その条件の概要は以下の通りです。
- 米国の株式市場に上場している
- 米国で登記、本社があること
- 配当を過去12ヶ月の間に支払っていること
- 時価総額が最低1億ドル
- 過去三ヶ月間に日次の取引量の平均が最低10万ドルあること
- REITを含む
上記に加えて、財務健全性などでの足切りもあります。
組入比率
組入比率の決まり方は、価総額ないしは均等であるケースが多いのですが、この指数が興味深いのは、配当により決まるという点です。
配当金に発行株式数を乗じて、各銘柄が支払う総配当額で比率が算出されます。
また、一社当たりの比率上限は5%、セクター上限は20%ですが、テクノロジーセクターの上限は25%で、不動産は10%としています。
組入銘柄
約300あるDGRWの構成銘柄の内、上位十銘柄を本記事初稿時と比較してみます。
二年で入れ替わりがあったのは、AltriaとBroadcomのみで、残りは同じです。顔ぶれはほぼ同じとはいえ、三位以下の銘柄の構成割合が小さくなっており、マイクロソフトの構成割合が一気に膨らんだとは言っても、上位十銘柄の影響度はちょっとだけ薄まった印象です。
2022/1/6時点銘柄 | 割合(%) | 2023/1/20時点銘柄 | 割合(%) |
---|---|---|---|
Apple Inc | 4.99% | Microsoft Corp | 6.78% |
Johnson & Johnson | 4.62% | Apple Inc | 4.79% |
Microsoft Corp | 4.61% | Johnson & Johnson | 3.88% |
Procter & Gamble Co | 3.52% | Procter & Gamble Co | 2.88% |
Philip Morris International Inc | 3.25% | Home Depot Inc | 2.66% |
The Coca-Cola Co | 3.17% | Merck & Co Inc | 2.58% |
Merck & Co Inc | 2.97% | The Coca-Cola Co | 2.51% |
Altria Group Inc | 2.88% | Broadcom Inc | 2.49% |
Home Depot Inc | 2.64% | Philip Morris International Inc | 2.46% |
Cisco Systems Inc | 2.61% | Cisco Systems Inc | 2.05% |
セクター構成
セクター構成も過去と比較します。テクノロジーが最も大きく、生活必需品と続きますが、構成割合に変化があり、下位の順位も異なっています。
生活必需品、ヘルスケア、資本財、コミュニケーションの割合は大きく減少。一方で、金融が大きく割合を占め、五番目となっています。
配当金履歴
配当金は、2013年の当初設定から支払われています。月当たりの推移は傾向は掴みにくいですが、支払い状況は下記チャートの通りで、平均するとひと月、一株当たり7セント強です。
月ごとのグラフでは分かりにくい傾向を見やすくするため、年ごとの推移を示すと、増配し続けていることが分かります。
VIGの毎月配当版(?)と思った
DGRWを見てきた私の印象は、「VIGが毎月配当になった?」と言ったものです。
そこで、VIGと基本情報を比較してみます。VIGの株価がDGRWの約2.5倍で、総資産も10倍くらいの差があり、バンガードのETFの驚異的な経費率の低さはここにも健在です。
DGRW | VIG | |
---|---|---|
株価(2023年1月20日) | 61.09ドル | 153.49ドル |
設定日 | 2013年5月22日 | 2006年4月21日 |
経費率 | 0.28% | 0.06% |
総資産 | 76億5,911万ドル | 776億ドル |
配当利回り | 1.91% | 1.92% |
配当金支払い頻度 | 毎月 | 四半期 |
銘柄数 | 301 | 289 |
インデックス | WisdomTree U.S. Quality Dividend Growth Index | S&P U.S. Dividend Growers Index |
上位の組入銘柄は四銘柄の重複。全体では128銘柄が重複していて、思ったほど重なっている訳ではありません。
DGRW銘柄 | VIG銘柄 |
---|---|
Microsoft Corp | UnitedHealth Group Inc |
Apple Inc | Johnson & Johnson |
Johnson & Johnson | Microsoft Corp |
Procter & Gamble Co | JPMorgan Chase & Co |
Home Depot Inc | Procter & Gamble Co |
Merck & Co Inc | Viza Inc |
The Coca-Cola Co | Home Deport Inc |
Broadcom Inc | Mastercard Inc |
Philip Morris International Inc | PepsiCo Inc |
Cisco Systems Inc | The Coca-Cola Co |
ここまで見た時に、DGRWがVIGの毎月配当版というには無理があるものの、どちらを選択するか、迷いそうでもあります。
- 経費率が高いけど、毎月配当に魅力 → DGRW
- 株価が手ごろで、米国株積立がしやすい → DGRW
- やはり、経費率と安定の総資産 → VIG
といった視点が選択のポイントかもしれません。
ただし、繰り返しとなりますが、銘柄の選定は各人の資産や運用状況、方針に依存をするため、投資の前の調査は忘れずに行ってください。
VOICEROID動画解説
最後に、本DGRWをコンパクトに説明する動画も作成していますので、記事と合わせてご覧ください。情報が作成時点のものとなることはご了承ください。