テーマ型投資信託やETFはインデックスに勝てるのか?

投資

米国市場は、昨今の不穏な空気の中、不思議なことに主要指数は比較的好調に見えます。しかしながら、個別株を見ていると二極化が進んでいる様に感じることがあります。

このブログで、定期的に状況をお知らせしている配当株には、好調な銘柄がいくつかあります。これに対し、スタートアップ企業のPenny Stockは奮わないどころか、平均取得価額の三割程度にまで下がり、回復につながりそうなニュースも見かけることがなく、絶望的な状況に感じます。

こういった市場環境の中、ARK Investのキャシー・ウッドがファンドマネージャーとして運用しているARK Innovation ETF (ARKK)は、一年前に一時160ドル近くにまで達したものの、2022年1月7日の終値は84.42ドルと、約半値に近付いています。

チャートを見ると、飛ぶ鳥を落とす勢いだったARKKは乱高下しています。一方で、NASDAQ100に連動するQQQは堅調の様相です。

データ引用:Yahoo! Finance(ARKK、QQQ株価推移、2019年1月2日~2022年1月7日、2021年1月2日の株価を100として指数化)

このようなチャートを見ると、「ARKKはオワコンだ」「キャシー・ウッドの目利きはどうだったのか」という声が出てきそうです。実際に、米国ではそのような声もあります。

ちょっと待ってください。本当にARKKはオワコンなのでしょうか。

2014年から運用が始まったARKKの設定来のパフォーマンスを時間軸を変えてみると、最近の暴落は大きいものの、当初設定から運用していれば、QQQよりも好成績であることが分かります。

データ引用:Yahoo! Finance(ARKK、QQQ株価推移、2014年10月31日~2022年1月7日、2014年10月31日の株価を100として指数化)

グラフは切り取り方で解釈が変わり、刺激的な言葉は時にはプロパガンダとなるので、踊らされないようにしたいです。


ここで気になったのは、ARKKに代表される「テーマ型」と呼ばれる投資信託やETFは、主要指数などのインデックス投資信託やETFにパフォーマンスで負けるものなのか。

私個人の印象としては、インデックス投資は長期投資向けであるけど、テーマ型は機動力勝負。そうは言っても、ARKのETFは長期保有を前提にしていたはず。

あれこれと悩むのであれば、まずデータを見てみようと思ったのが、本記事を書いたきっかけとなります。

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MOON vs. QQQ

テーマ型の投資商品として、ARKKの他にも何かあるか、真っ先に頭に思い浮かんだのが、Direxion Moonshot Innovators ETF (MOON)です。このETFは、S&P Kensho Moonshots Indexの連動を目指しています。

この指数に連動すると聞いて、ピンときた人は鋭いです。

日本では、大和アセットマネジメントから「iFreeNEXT ムーンショットインデックス」として販売されています。本投資信託については、別記事で紹介をしていますのでご覧ください。

S&P Kensho Moonshots Indexは、未来に向かっているイノベーティブな銘柄を50社選定して、組み入れるといったものです。なんとなく、NASDAQ100よりも期待出来そうな気がしますが、現時点でのパフォーマンスはどうなっているのでしょうか。

下記チャートにある様に、ARKKと同様、2021年の初めは好調なパフォーマンスを見せていましたが、じわじわと株価は下がっていき、2021年後半にはQQQと株価が逆転してしまいました。

データ引用:Yahoo! Finance(MOON、QQQ株価推移、2020年11月13日~2022年1月7日、2020年11月13日の株価を100として指数化)

ただし、MOONはまだ新しく、比較も当初設定から一年を超えたくらいの短い期間なので、これだけのデータで結論を出すのは早計かもしれません。

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日本で買えるARKの商品

テーマと言って思い浮かぶのが、ARKのETFです。しかし残念ながら、日本では楽天証券などのメジャーな証券会社でもARKのETFを取り扱っていません。

ただ、代理となる商品がありそうです。日興アセットマネジメントが、2017年8月にARKへの一部出資を決定し、ARKを戦略的パートナーとしています。投資商品の開発などでも連携を図り、現在五つのテーマで投資信託を販売しています。

ただ、これら投資信託は、ARKKなどをベンチマークとしたものではなく、ARKの助言を受けて運用しているものとのことです。

キャシー・ウッドの意見が多大に反映されていることはないとは思いますが、各テーマに基づいた銘柄選定にはARKの哲学があると思います。

これら五つのテーマは以下の通りで、各テーマに対して私が一言付け加えています。

  • フィンテック:金融のデジタル化
  • MaaS(マース):モビリティのイノベーション
  • スペース(宇宙):宇宙空間の商業利用
  • ゲノム:遺伝子工学のイノベーション
  • ゼロコンタクト:生活の変化をデジタルでサポート

何かしら話題になったり耳にするテーマだと思われます。短期的な成長はもちろん期待できそうですが、株価の二極化が垣間見られる今、どのようなパフォーマンスなのでしょうか。実際に比較をしてみます。

比較

比較前提

まずは、比較の前提を記載します。

対象の投資信託商品

上述のテーマに対応する日興アセットマネジメントの投資信託は以下の通り。一つのテーマに複数の商品がある場合は、ひとつを選択しています。

  • フィンテック:グローバル・フィンテック株式ファンド
  • MaaS(マース):グローバル・モビリティ・サービス株式ファンド(1年決算型)
  • スペース(宇宙):グローバル・スペース株式ファンド(1年決算型)
  • ゲノム:グローバル全生物ゲノム株式ファンド(1年決算型)
  • ゼロコンタクト:デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド

これら五つの投資信託に対抗するのは、NASDAQ100に連動を目指す「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」です。世界株インデックスとの比較も考えたのですが、尖った銘柄が含まれるファンドとの比較が良いと判断した上での結果です。

比較期間

基本的には、iFreeNEXT NASDAQ100インデックスの運用が開始されてからの2018年8月31日以降で比較をします。ただし、同日以降に運用が始まった投資信託がある場合は、後の日付での比較となります。

比較の仕方

起算日の基準価額を100として指数化し増減を表しています。

国別構成

日興アセットマネジメントの投資信託は、米国以外の株式も含まれ、2021年11月30日時点の米国の割合を下記に示します。

  • フィンテック:グローバル・フィンテック株式ファンド → 66.4%
  • MaaS(マース):グローバル・モビリティ・サービス株式ファンド(1年決算型) → 69.1%
  • スペース(宇宙):グローバル・スペース株式ファンド(1年決算型) → 81.1%
  • ゲノム:グローバル全生物ゲノム株式ファンド(1年決算型) → 80.1%
  • ゼロコンタクト:デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド → 74.8%

参考までに、iFreeNEXT NASDAQ100インデックスは米国が98%となっています。

比較1:フィンテック|グローバル・フィンテック株式ファンド

ファンド情報

本ファンドの目論見書には、成長が期待されるフィンテック関連企業の株式を中心に投資を行ない、中長期の成長を目指す旨が書かれています。

ファンドの基本情報は下記の通りですが、コストはかなり高い印象です。

グローバル・フィンテック株式ファンド
設定日2016年12月16日
購入時手数料3.85%(税抜3.5%)以内
信託報酬1.925%(税抜1.75%)
基準価額26,481円
総資産1,871.28億円
2022年1月7日時点

保有銘柄は41あり、上位には私がかつて保有していたコインベース(COIN)、ブロック(旧スクエア)(SQ)、Shopify(SHOP)などが含まれ、これら三社で25%相当の構成割合となっています。

また、コインベースがキャシー・ウッドお気に入りの銘柄であることから、ARKの助言が入っていることが垣間見れます。

比較

iFreeNEXT NASDAQ100インデックスの運用が始まった2018年8月31日から三年半のパフォーマンスは以下の通りです。

グローバル・フィンテック株式ファンドは96.4%増で、iFreeNEXT NASDAQ100インデックスは53.8%増となり、フィンテックに軍配が上がりました。

比較2:MaaS|グローバル・モビリティ・サービス株式ファンド

基本情報

MaaSはモビリティ・アズ・ア・サービス(Mobility as a Service)の略で、成長が期待されるモビリティ・サービス関連企業の株式を中心に投資を行なって中長期の成長を目指す旨が、目論見書に書かれています。

基本情報は下記の通りで、フィンテックと同様にコストは高い印象です。

グローバル・モビリティ・サービス株式ファンド(1年決算型)
設定日2018年1月31日
購入時手数料3.3%(税抜3%)以内
信託報酬1.925%(税抜1.75%)
基準価額20,018円
総資産698.07億円
2022年1月7日時点

保有銘柄は41で、上位には、テスラ(TSLA)、地理情報や交通インフラ、農業、建設業向けのシステムを提供しているTrimble (TRMB)と言った銘柄に加え、日本の小松製作所も含まれています。

テスラ一社で9.5%という点、また小松製作所も含まれているという点がARKの影響を感じるところです。

比較

同様に、iFreeNEXT NASDAQ100インデックスの運用が始まった2018年8月31日から三年半のパフォーマンス比較となります。

グローバル・モビリティ・サービス株式ファンドは91.3%増で、iFreeNEXT NASDAQ100インデックスは53.8%増で、MaaSがNASDAQ100を上回っています。

比較3:スペース|グローバル・スペース株式ファンド

基本情報

目論見書には、宇宙関連ビジネスを行う企業だけではなく、それにより恩恵を受ける企業も投資対象にしていると明記されています。

ARKが運用しているARKXという宇宙関連ETFには、恩恵を受ける企業としてネットフリックス(NFLX)が組み入れられており、本ファンドにもネットフリックスが含まれています。なお、銘柄数は38となっています。

ファンドの基本情報は下記の通りで、フィンテック、MaaSと同水準の信託報酬となっています。

グローバル・スペース株式ファンド(1年決算型)
設定日2018年8月13日
購入時手数料3.3%(税抜3%)以内
信託報酬1.925%(税抜1.75%)
基準価額15,559円
総資産375.28億円
2022年1月7日時点

比較

グローバル・スペース株式ファンドの設定日は2018年8月13日で、iFreeNEXT NASDAQ100インデックスと同じくらいの期間での運用となります。なお、比較は2018年8月31日からの三年半となります。

グローバル・スペース株式ファンドは39.8%増で、iFreeNEXT NASDAQ100インデックスは53.8%増となり、NASDAQ100に軍配が上がりました。

比較4:ゲノム|グローバル全生物ゲノム株式ファンド

基本情報

本ファンドもスペースファンドと同様に、ゲノム関連ビジネスを行なう企業だけではなく、それによって恩恵を受ける企業も投資対象としています。また、ゲノム関連ビジネスとは、ゲノム解析やゲノム編集を用いた製品の開発、サービス提供を指しています。

下記の基本情報にある様に、信託報酬は依然として高いのですが、フィンテック、MaaS、スペースよりもやや低めの設定になっています。

グローバル全生物ゲノム株式ファンド(1年決算型)
設定日2019年1月16日
購入時手数料3.3%(税抜3%)以内
信託報酬1.804%(税抜1.64%)
基準価額15,163円
総資産531.18億円
2022年1月7日時点

保有銘柄は55で、上位に、Intellia Therapeutics (NTLA)、ARKのお気に入りのTELADOC HEALTH(TDOC) 、そしてスイスのCRISPR Therapeutics(CRSP)と言った銘柄が含まれています。

比較

グローバル全生物ゲノム株式ファンドの設定日は2019年1月16日なので、短めの三年間での比較となります。

グローバル全生物ゲノム株式ファンドは121.8%増で、iFreeNEXT NASDAQ100インデックスは80.0%増となり、ゲノム関連のパフォーマンスは力強いものでした。

比較5:ゼロコンタクト|デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド

基本情報

ファンドの名称は「デジタル・トランスフォーメーション」とありますが、愛称が「ゼロコンタクト」となっており、どのような銘柄に投資をするのか分かりにくい印象です。

目論見書には、将来の成長が期待される、ゼロ・コンタクト・ビジネス(非接触型ビジネス)関連企業に投資をすると書かれており、キーワードは「非接触」の様です。

基本情報の信託報酬は、上記四つのファンドよりも低めの設定になっていますが、主要指数に連動するインデックスファンドに見慣れていると、高いと感じてしまいます。

デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド
設定日2020年7月31日
購入時手数料3.3%(税抜3%)以内
信託報酬1.7985%(税抜1.635%)
基準価額9,910円
総資産3,904.67億円
2022年1月7日時点

保有銘柄は44で、上位にはコインベース(COIN)、Shopify(SHOP)、Unity(U)、ROKU(ROKU)、Twilio(TWLO)といった銘柄が含まれています。

比較

デジタル・トランスフォーメーション株式ファンドの設定日は2020年7月31日で、約一年半と短い期間での比較です。

デジタル・トランスフォーメーション株式ファンドは27.9%増で、iFreeNEXT NASDAQ100インデックスは16.0%増となり、デジタル・トランスフォーメーションがNASDAQ100を上回っています。

値動きの激しさが吉と出た

比較結果を見た第一印象は「予想に反して、テーマ型の方が良い結果となっている」と言ったものです。

設定日が2020年7月のデジタル・トランスフォーメーション株式ファンドを除き、基準価額の推移は2020年前半までは、iFreeNEXT NASDAQ100インデックスの方がやや優勢でした。

ところが、2020年3月の株価下落を境に状況が変わります。各投資信託の基準価額は大きく下落したにもかかわらず、以降の戻りが力強いものとなっています。

値動きの激しいことが結果的に吉となった結果になったと言えます。

もちろん、冒頭に紹介したMOONは奮わない状況であることに鑑みると、テーマ型すべてが良いわけでも悪いわけでもなく、どのようなテーマに着目するかによって運用成果が異なってきます。

今回、比較をして思ったのは、テーマ型であったとしても長期間運用されていれば、それなりのパフォーマンスが得られる可能性があるという事。しかし、心に留めておく点としては、波に乗れなくなることもあるので、塩漬けを避けるために損切を自分でルール化しておくことと、コストの確認。

過去の結果から将来の予測はできませんが、何かしらの示唆を受け取れれば、投資方針の考え方に影響を与えそうです。