資本家のウッドストックはオンライン開催
氏が率いるバークシャーハサウェイの株主総会は、米国で夏に行われる「ウッドストック・フェスティバル」にちなみ、また集まる人数も四万人規模と言われている故、「資本家のウッドストック」と呼ばれています。日本でもフェスがありますが、それと同列に語られるというのも興味深いです。
例年この時期に行われる株主総会は、今年は新型コロナウイルスの影響でオンラインにて開催されました。
ツイッターの日本でのトレンド
現地時間の5月2日に行われた株主総会の様子は米国Yahoo! Financeが独占でオンライン配信の主催をし、インターネットで見ることができます。ただし、五時間に及ぶのは覚悟してください。
日本時間の5月3日には「バフェット氏」という単語がツイッターのトレンドになっていて、さっと見たところ、日本経済新聞の「バフェット氏、航空株すべて売却 「世界は変わる」- 1~3月期、5兆円の最終赤字」という記事が引用されているツイートが目立ちました。
米国でも当然の事ながら大きく扱われ、保有しているアメリカン航空、ユナイテッド航空、デルタ航空、サウスウエスト航空の株式全てを売却し、その金額は40億ドル相当であることを伝えています。
各業界に関する示唆
航空株売却は致し方無い
日経の報じ方は、悲観論を断定的に書いていますが、米国の記事に目を向けると必ずしもそうではない印象です。
バフェット氏の発言は日本では「世界は変わった」「私の間違い」と言われています。発言を振り返ると “The world has changed for airlines,” “It turned out I was wrong” なので厳密には「世界は航空業界にとって変わった」「私の間違いであることが分かった」という感じですね。
更にバフェットは次のようにも述べています。
- 「自分の判断の誤りに対しては、航空会社のCEOが悪いわけではない」
- 「わずかでも間違いがあってはならない中、数百万の人を相手にしている現在の航空業界は正しいことをしているし、経営は非常に難しい」
- 「今後三~四年で昨年並みにお客が戻るかはわからない。そうかもしれないし、そうでないかもしれない。将来も現時点では明確にわからないし、航空会社の経営のせいという訳ではない」
これらの内容から、新型コロナウイルスにより航空業界が受けたダメージの大きさと、経営陣が悪いわけではない、という気持ちが伝わってきます。
そのため、”Understandable mistake”と業界が初めて経験する予期できない状況で、このような間違いは分からなくもない、としています。
日経が「冷徹な投資家」という表現を用いていますが、そうは思いません。投資家としては株式売却をするが、今回の件については各社CEOが悪いわけではないし、コロナウイルスの影響を読めなかった自分の誤りを認めていると思っています。
氏は、同時に株式の買い戻しについても言及し、株式の買い戻しは株主に現金を還元することであると述べた上で、適切なタイミング、それは極僅かなゴミも無い、きれいな状態で買い戻すべきと結んでいます。
石油への投資は自虐的
株主総会では、昨年にバークシャーハサウェイが投資を行ったオクシデンタル・ペトロリウムに関する質問も挙がりました。
それに対してバフェット氏は、
- 現在の原油価格では採算が取れないこと
- 今後数年で需要が戻る見込みが薄いこと
- 掘った原油を貯蔵する場所がないこと
- ロシアとサウジアラビアの対応
に触れ、「あなた(質問者)がオクシデンタル・ペトロリウムに投資をしているなら、これまでの原油価格に鑑み一緒に間違いを犯したといえる」と若干自虐的な回答をしています。
不動産に対しては弱気
不動産に対してはバフェット氏は弱気な発言をしています。
一つ目は商用店舗の不動産です。消費者が自宅待機となることで、購買の通販へのシフトは加速し、実店舗を持つ小売店は実店舗での事業縮小が求められ、賃料収入も今後は難しくなっていきます。これには借りる坪数が小さくなっていくことも含まれます。
二つ目は事務所用の不動産についてです。在宅勤務が増えたことにより、企業がフレキシブルな働き方制度を導入していき、事務所を縮小していくことが予見されることです。
特に後者については、数年前に米国IBMや米国ヤフーが在宅勤務制度を大幅に縮小したというニュースがありました。労務管理上、事務所に出勤してもらう方がよいという判断をした企業が今後、どのような対応をするかは興味深いです。
同時に、不動産の割合が二割近いSPYDの今後が気になります。
三月、四月のバフェット氏
2020年3月12日に、バフェット氏が下落は1987年や2008年と比較すれば、まだマシだと言っているという記事を書きました。
しかし、4月1日から2日にかけて、バークシャーハサウェイはデルタ航空とサウスウエスト航空の株式を3億1400万ドル分売却しています。この時点では公式の理由は出ていません。同時にデルタ航空は第2四半期の売上げが90%失われると見込んでいました。
更に翌週の4月7日から8日にかけては、Bank of New York Mellonの株式、約86万株を3,000万ドルで売却しています。こちらも当時は公式に理由は発表されていません。
三月から四月にかけての世の中の動きは、バイ・アンド・ホールドのバフェット氏ですら、行動に移さざるを得ない状況だったのかもしれません。
こうなると素人にはどうすればよいのか分からなくなります。ただ、バフェット氏の一挙手一投足の通りに投資する必要はなく、自分の投資軸を持つことが肝要です。
バークシャーハサウェイ株の動き
最後に過去三か月のバークシャーハサウェイ株の動きを振り返ります。チャートはクラスB(BRK-B)のものです。
二月後半から下落し、三月に底をつけて現在は180~190ドルの間を推移しています。
5月1日の終値は182.67ドルでした。
株主総会が終わり週明けから当社の株価はどのように動くのか、航空株の行方がどうなるのか、加えて現在バークシャーハサウェイにある1,370憶ドルの現金は今後どのように投資されるのかが気になります。
本記事で触れていなかった5兆円規模の損失については、下記記事をご覧ください。