「ラッセル○○」という単語を聞いたことがありますか?
FTSE Russellが提供するRussell 2000という指数は耳にしたことがあるかもしれません、これにはRussell 3000と呼ばれる指数をはじめ、複数の指数がありますが、本記事ではRussell 1000について書いていこうと思います。
VOICEROID解説
本記事の概略を説明したVOICEROID解説動画を作成いたしましたので、ぜひご覧ください。情報は動画作成時点です。
指数を提供する会社 – FTSE Russell
Russellと呼ばれる指数は、FTSE Russellという会社から提供されています。FTSEは、Financial Times Stock Exchangeという英国の指数を提供する会社で、London Stock Exchange Group傘下にいます。
なお、FTSEは2015年にRussellと統合してブランド名をFTSE Russellに変更しました。
余談ですが、FTSE提供の指数に、FTSE 100というものがあります。これは欧州、特に英国で広く使用されていて、日本での日経平均、米国でのダウ平均やS&P500と言った位置づけの指数と言えます。1984年1月に1000ポイントでスタートしたFTSE 100は、2022年1月21日には7,494.13ポイントにまで成長しています。
さて、FTSE Russellは米国でも複数の指数を提供しており、Russell US Indexesは米国の株式市場を広く網羅しています。Russell 1000は、このRussell US Indexesのひとつです。
Russell1000とは
Russell US Indexes内の指数
Russell US Indexesの時価総額に応じた指数は以下の様になっています。米国で99%をカバーし、対象となる4,000社を含んだRussell 3000Eをはじめ、3,000社を対象としたRussell 3000、時価総額上位からの企業数に応じた複数の指数で構成されています。
3000 = 2000 + 1000
上記の表には、Russell 3000、Russell 2000、Russell 1000といった指数があります。
3000 = 2000 + 1000 という足し算ができるように、米国市場を97%カバーするRussell 3000は、Large-capと言われる大企業で構成されるRussell 1000と、Small-capと呼ばれる小規模の企業で構成されるRussell 2000を合わせたものとなります。
なお、英語での説明では「サブセット(subset)」という単語を使っているため、Russell 1000は、Russell 3000の一部分とも言えます。
Russell 3000で97%のカバレッジなのですが、Russell 1000でも92%をカバーしています。
Russell1000の特徴
Russell 1000は、Russell 3000、Russell 2000と共に1984年に提供開始となっています。
時価総額型加重
指数算出は、時価総額加重を用いているため、S&P500やNASDAQ総合指数と同じです。なお、株価平均指数と呼ばれるものには、日経平均やダウ平均があります。
構成銘柄選定基準
上述の通り、Russell 1000は、Russell 3000の一部です。Russell 3000に含まれる上場企業の時価総額を、大きい順に順位付けをして上位1,000社までをRussell 1000の構成銘柄としています。
そのため、1,000番目に近いところに位置する企業は、毎年三月の銘柄入替時期にRussell 1000とRussell 2000を行き来することがあるというのが、本指数の特徴ともいえます。
また、Russell 1000はLarge-capで構成されるとのことですが、大企業で1,000社となることはなく、Mid-capと呼ばれる中堅規模の企業も含まれることになります。
規模が小さめの企業が含まれることで、指数の動きは大きくなる、つまりボラティリティも高めになると言われています。
参考までに、Large、Mid、Smallに区分けされる時価総額の目安を下記に示します。この情報は、Investopedia.comを参考にしています。
- Large-cap:100億ドル以上
- Mid-cap:20億~100億ドル
- Small-cap:3億~20億ドル
S&P500の銘柄はどう選ばれる?
Russell 1000は米国の企業を対象に機械的に選定されていると表現できます。
これに対しS&P500は、選定委員会を設け、決算内容や株式流動性など以下の要件をクリアした企業から組入銘柄を選定しており、両指数での選定基準は異なります。
- 米国籍の会社
- NYSEやNASDAQなど指定の証券取引場に上場
- 時価総額が82億ドル以上
- 年間取引に対する浮動株調整後の時価総額が最低1.00を超えている
- 最低25万株の月間取引が評価日までの半年続いている
- 直近の4四半期が黒字
Russell 1000とS&P500比較
上位構成銘柄
上位の構成銘柄を下記に掲載します。参考までにS&P500と並べてみると、当然の事ながら、ほぼ同じ銘柄が並びます。これは、
- 時価総額加重で算出
- 米国の大企業で最も大きな時価総額から順位付け
という事を考えれば、合点の行くものです。
Russell 1000 | S&P500 |
---|---|
Apple Inc | Apple Inc |
Microsoft Corp | Microsoft Corp |
Nvidia Corp | Nvidia Corp |
AAmazon.com Inc | Amazon.com Inc |
Meta Platforms, Inc. | Meta Platforms, Inc. Class A |
Alphabet Inc A | Alphabet Inc A |
Alphabet Inc C | Alphabet Inc C |
Berkshire Hathaway | Berkshire Hathaway B |
Broadcom Inc | Broadcom Inc |
Lilly Eli & Co | Tesla, Inc |
セクター構成
今度はRussell 1000のセクター構成を、S&P500のセクター構成と共に確認します。
両者ともにテクノロジーが三割近くを占めています。しかし、コミュニケーションまでを含めた場合、Russell 1000は三割台半ばであるのに対し、S&P500はほぼ四割になり、テクノロジー関連の割合が異なることが分かります。
また、生活必需品や資本財の構成割合がRussell 1000で大きくなっています。
Russell1000に投資をするには
このRussell 1000に投資をしたいと思ったときに、どうすればよいのか。頭に浮かぶのは、この指数をベンチマークとするETFを購入することです。
ETFは複数存在するのですが、日本で購入可能なものは、Vanguard Russell 1000 ETF (VONE)で、楽天証券とSBI証券での取り扱いを確認しました。(2022年1月時点)
VONE基本情報
VONEの基本情報は下記の通りです。参考にVOOも掲載しています。Vanguard社がS&P500をベンチマークとして運用しているVOOと比較すると、経費率は高めで、純資産は小さいです。
VONE | VOO | |
---|---|---|
設定日 | 2010年9月20日 | 2010年9月7日 |
経費率 | 0.08% | 0.03% |
純資産 | 73億ドル | 1.2兆ドル |
VONEのパフォーマンス
パフォーマンスをVOOと比較します。
切り取る時間軸で結果は異なることがありますが、下記は2024年8月時点の過去五年における推移を示しています。なお、括弧内の株価は2024年8月16日時点です。
- VONE:+89%(251.14ドル)
- VOO:+92%(509.45ドル)
五年前から両者に投資をしていた場合、僅かながらVOOの方が良い結果を得られました。
どちらに投資をする?
米国企業の時価総額に応じた指数であるRussell 1000は、構成銘柄数、セクター構成はS&P500と異なるものの、過去五年のパフォーマンスはS&P500が上回っています。
しかし、その差は僅差です。
テクノロジー関連の株価はAIバブルの影響も長く、動きは大きくなっています。
何かでAIバブルが弾けてテクノロジー関連で株価の売りが加速すれば、S&P500の数値が下がることが見込まれます。
しかし、一方でRussell 1000には規模が小さめの企業も構成銘柄として含まれます。そういった企業の株価は、株式相場が荒れる時や景気後退なので影響を大きく受ける恐れがあります。
そのため、どちらに投資をした方がよいか、という疑問に対する回答は簡単には出せないのではないかと考えています。
テクノロジー関連の比重が高いS&P500なのか、分散はあれども、大企業ばかりではないRussell 1000なのか。ここは最終的には各個人で決めるしかありません。